2010年7月14日水曜日

『アルペンスキー用語辞典』についてのお断り

アルペン競技に携わっていると、レジャースキーとか基礎スキーではなじみの薄い用語も結構登場します。いつかまとめようと思って、ネタ帳を作って、そういう用語を少しずつ書き貯めておいたのですが、なかなか時間が取れなくてまとめきれなくていました。
この時期は、本業と言うか、スキー場にいる時間を他の事に充てられるので、重い腰を上げて少し『ネタ帳の整理整頓』をやってみました。
構想から執筆まで、結構時間がかかってしまいましたが、やっと形になってきたので、この機会に公開してみたいと思います。



そこで、お断りというか、言い訳になってしまうのですが、すでに、いろいろな方がWebでアルペン用語辞典を公開されています。『用語辞典』と言うと、同じ対象についての解説になるので、どうしても文章が似てきてしまう部分があります。私が執筆した事典に関しても、その元ネタとなっている私のネタ帳の情報ソースも、人から聞いた事、Webで見た事、自分のオリジナル文章、などがごちゃ混ぜ状態で、そのなかにはWebからコピーした文章も含まれているはずなのですが、正直、判別不能になってしまった部分があります。
そんな訳で、今回公開した『事典』の文章中に、私のオリジナルではない文章が含まれていることを、ここに明記しておきます。
ご覧になった方の中で、この部分は私の文章のコピーだ、とか、私の解説と似ている、とかいう方がいらっしゃいましたら、お手数でもご連絡頂ければと思います。
事後承諾的な言い訳となってしまい、大変申し訳ないのですが、同じ道楽を共有する方に少しでも役立てば、という思いからの『学習資料』ですので、寛大な処置をお願いしたく、また、悪意の盗作・無断転載ではないことをご了承頂ければ幸いです。



アルペンスキー用語辞典



今後随時気まぐれに更新していきたいと思います。記事の寄稿も大歓迎です。どうぞよろしくお願いします。


アルペンスキー用語辞典更新記録


  • 2010/07/16 Rev.1.1.0 項目追加

  • 2010/07/15 Rev.1.0.4 ポールセット解説動画追加

  • 2010/07/14 Rev.1.0.1 初版公開




2010年7月11日日曜日

検索結果を複数ページに分割する。

エントリーが多くなってくると、それに伴って検索結果も増えてきますよね。
結果が10件くらいならともかく、50件とか、100件とかになっちゃうと、結構大変なことになってきます。

Movable Typeのデフォルトだと、結果は20件まで同じページに表示されますが、21件目以降へのリンクが自動生成されません。
つまり、21件目以降の検索結果が分からない、ということになります。

この『検索結果をページ分割して出力する手順』を以下に書き残す次第。

なぜ思い立ったかと言うと、このブログの検索結果の表示がおかしい事に気が付いたから。
ふつう、自分のブログの記事を自分では検索しませんよね。だから、今まで気が付かなかったのですが、検索結果が複数ヒットした場合でも、最初の1件しか表示されない、という、なんともお粗末な感じになっていたのです。もしかしたら、ご迷惑をおかけしていたかもしれません。ごめんなさい。

特にカスタマイズしなくても、MTのデフォルトだと20件までは表示されるはず。おかしいなぁ、と思って、検索結果テンプレートをチェックしても、特に問題なし。で、よくよく考えてみると、検索テンプレート内に後述するmt:SearchMaxResultsを記述していなかったのでした。チャンチャン。

これでとりあえずすべての検索結果が表示されるようになったのですが、ついでなので、検索結果ページをカスタマイズしてみようかと。完全に行き当たりばったりの思い付きです。

毎度のことですが、すべて自己流なので、詳しい人が見たら無駄なタグとか、間違ったソースを書いているかも知れません。一応は自分の環境での正常動作は確認済みですが、それ以上のテストは行っておりませんので、あしからずご了承ください。
その辺を踏まえた上で、今回は、以下の設定でカスタマイズしていきたいと思います。


  1. デフォルトの20件表示を解除して、1ページに5件の表示で出力する。

  2. 5件以上の検索結果があるときには、ページを分割して出力する。

  3. 分割された各ページへのリンクを出力する。

  4. このリンクは、前後最大5件の表示とする。例えば、20ページ中7ページ目だったら、2から12のみ表示するように出力する。

  5. 検索結果が1ページに収まるときは、このリンクを非表示にする。



といった感じです。


mt-config.cgiの編集



mt-config.cgiの結構下の方に、


# The maximum number of results to return in a search. If this is a straight

# search, the number of results is per-blog--if you set MaxResults to 5,

# for example, that would mean a maximum of 5 results for each blog in your

# system. In a new comment search, this is the maximum number of entries

# with new comments.

#

#MaxResults 5



というところがあるので、
#MaxResults 5
のコメントアウトを解除して、
MaxResults 5
にします。

mt:SearchMaxResultsの挿入



言い訳になりますが、前述したように、MTは不親切なので、mt-config.cgiを編集しただけでは検索結果に反映されません。
検索テンプレートに、



<input type="hidden" name="limit" value="<$mt:SearchMaxResults$>" />




を追加してください。

場所は、



<input type="hidden" name="IncludeBlogs" value="<$MTBlogID$>" />




の行の下あたりで。これでやっと1ページの表示件数が反映されます。


検索結果ページを分割して出力する




ページ分割するには、検索結果テンプレートを編集していきます。

直接、検索結果テンプレートに書き足してもいいのですが、あとあとの編集のために、このページ分割出力関係をモジュール化しておくことにします。

検索結果テンプレートの、MTSearchResultsタグを閉じたあたりに、
<$MTInclude module="検索結果ページ分割リンク"$>(仮称。モジュールの名前はお好きにどうぞ)


と記入して、新しいモジュールを作成します。

このモジュールに、必要なタグを書き込んでいきます。

以下に見本ソースを書きましたのでご参考に。
このソースでは、検索結果の総ページ数を出力し、ページが分割出力(今回の設定だと、6件以上ヒットした場合)された場合には、ページ数の数字に各々のページへのリンクが付きます。
そして、直接各ページへ飛ぶリンクの前後に、前後1ページへリンクする『前』というリンクと、『次』というリンクも表示させます。




<div class="content-nav">
<MTPagerBlock>
<MTIfCurrentPage>
<MTVar name="__value__" setvar="page_next" value="5" op="+">
<MTVar name="__value__" setvar="page_prev" value="5" op="-">
</MTIfCurrentPage>
</MTPagerBlock>

<mt:IfPreviousResults>
<a href="<$mt:PreviousLink$>" rel="prev" onclick="return swapContent(-1);">&lt; 前</a>&nbsp;&nbsp;
</mt:IfPreviousResults>
<mt:PagerBlock>
<mt:IfCurrentPage>
<$mt:Var name="__value__"$>
<mt:Else>
<MTIf name="__value__" le="$page_next"><MTIf name="__value__" ge="$page_prev"><a href="<$mt:PagerLink$>"><$mt:Var name="__value__"$></a></MTIf></MTIf>
</mt:IfCurrentPage>

</mt:PagerBlock>
<mt:IfMoreResults> &nbsp;&nbsp; <a href="<$mt:NextLink$>" rel="next" onclick="return swapContent();">次 &gt;</a>
</mt:IfMoreResults>
</div>





検索結果が1ページで収まる場合の調整




上記のソースでは、分割された最初のページで『前』、最後のページで『次』は表示されないようになるのですが、検索結果が1ページで収まる場合(今回の設定だとヒットしたのが5件以下)に、リンクが付かないページ番号『1』が表示されてしまいます。

『検索結果は1ページしかありませんよ』というメッセージだと理解してもいいのですが、結果が1ページで収まるのであれば、この『1』は必要ないような気がします。
お好みになってしまいますが、この『1』を消すために、mt:unlessタグを使用して、結果が1ページの時には、リンクを出力しないようにします。
mt:unlessを反映させたソースがこちらです。





<div class="content-nav">
<MTPagerBlock>
<mt:getVar name="__value__" setvar="result_number" />
<MTIfCurrentPage>
<MTVar name="__value__" setvar="page_next" value="5" op="+">
<MTVar name="__value__" setvar="page_prev" value="5" op="-">
</MTIfCurrentPage>
</MTPagerBlock>
<mt:unless name="result_number" eq="1">
<mt:IfPreviousResults>
<a href="<$mt:PreviousLink$>" rel="prev" onclick="return swapContent(-1);">&lt; 前</a>&nbsp;&nbsp;
</mt:IfPreviousResults>
<mt:PagerBlock>
<mt:IfCurrentPage>
<$mt:Var name="__value__"$>
<mt:Else>
<MTIf name="__value__" le="$page_next"><MTIf name="__value__" ge="$page_prev"><a href="<$mt:PagerLink$>"><$mt:Var name="__value__"$></a></MTIf></MTIf>
</mt:IfCurrentPage>
<mt:Unless name="__last__">&nbsp;</mt:Unless>
</mt:PagerBlock>
<mt:IfMoreResults> &nbsp;&nbsp; <a href="<$mt:NextLink$>" rel="next" onclick="return swapContent();">次 &gt;</a>
</mt:IfMoreResults>
</mt:unless>
</div>




一応、このソースが今回設定したカスタマイズの完成形ということになります。


あとは、細かい調整をお好みでカスタマイズすれば完了ですね。
例えば、数字を少し大きく表示させたければテキストサイズを変更してみるとか、センタリングしたければcenterタグなどで整えるとかすればよろしいのかと。



2010年7月6日火曜日

ペナルティーポイント計算ツール。

あまり重要な事でもないんですが・・・・・

JavaScriptのお勉強が今一つなものですから、作ろう作ろうと思ってずーっと放置してあった作りかけのツールがありました。

それが、このペナルティーポイント計算ツールです。

計算が結構ややこしいというか、式がとっても長くなってしまうので、面倒になって途中でやめてそのままになっていたんですね。

久々に存在を思い出し、残りの部分を作ってみた、という訳です。

何とか形になったので、ポイント解説のページからポップアップするように上げておきました。ペナルティーポイントの説明の後にリンクがあります。

レースポイントにこのペナルティーポイントを足した数字がリストの基準になりますので、ややこしい計算式ではありますけど、一応、理解していた方が何かと良いと思います。

とりあえず、お知らせまで。


2010年7月4日日曜日

再構築での500エラーを回避する。

Movable Typeをスタティックで構築している場合、何かカスタマイズした後にすべてのエントリーを再構築する場面が多いと思います。

この時、エントリーが多くなってくると再構築時に500エラーが出てしまう事があります。

そしてこの現象の原因として下記が考えられます。


  1. サーバのパフォーマンス低下

  2. サーバのメモリ量不足



大多数の個人ユーザーはレンタルサーバー会社のホスティングサービスを利用しているかと思います。
一つのサーバーを結構な人数でシェアしているわけです。
で、この複数名で共有しているレンタルサーバでは、CPU やメモリ等の事実上のスペックがマシンを占有する人数や使用頻度に反比例して低下していきます。

そのために、サーバーが混んでいるときには再構築の成功率が低下してしまうのです。

この現象を少しでも回避するために、mt-config.cgiの内容を書き換えるのが結構有効な手段です。

mt-config.cgiをエディターで開くと、



# When rebuilding individual archives, Movable Type splits up the rebuilding

# process into segments, where each segment consists of rebuilding N entries.

# The default value for N is 40, so by default, MT will rebuild 40 entries at

# a time, then move on to the next 40, etc. You can change that value globally

# here; for example, if you have a very stable server, you might wish to just

# get it all done with in one batch.

#

# EntriesPerRebuild 40



というところがあります。

どういう事を言っているのかというと、



個々のアーカイブを再構築するとき、Movable Typeはセグメントごとに再構築プロセスを分けます。

このとき、各々のセグメントはN値でエントリを再構築することから成り立っています。

Nのデフォルト値は40なので、デフォルトで、MTはまず最初に40のエントリを再構築し、そして次の40エントリ、さらに次、というプロセスを取ります。

ここの設定でグローバルにN値を変えることができます。

たとえば、非常に安定したサーバーで運営しているのであれば、すべてのエントリを1つのバッチで再構築することもできます。




といった感じの意味の事が書いてあるのです。

つまり、デフォルトではいっぺんに40エントリーずつ再構築する仕様になっているのですが、これではサーバーの負担が大きいために実行できず、500エラーを返されてしまう、という訳です。

これを、10なり、15なり、自分の環境でエラーが出ない値まで下げてやると、結構な確率で500エラーは出なくなります。

上記の

#EntriesPerRebuild 40

のところを

EntriesPerRebuild 10

くらいの値にしてあげるとよいのではないかと。もちろん、20辺りで一度試してみてもいいでしょう。

それにしても、『たとえば、あなたが強力なサーバーを持っているなら、N値を増やしたいと思うでしょう』って言うのは少々・・・な感じもします。


もちろん、これ以外の原因もありますので、絶対500エラーが出なくなる、という訳ではありませんけど、この『N値設定』一度お試しください。



2010年7月3日土曜日

法律について考える

敷金返還、退去精算金の返還などに関連する法律について、少し考えてみましょう。

法律を味方につけるために。

※内容的には2003年当時のままです。その後追記などは加えておりませんんで、現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

民法第606条1項、および第616条、598条について



一般的に、大家が請求の根拠としている、宅建業界の商慣習に基づく計算方法は、改装工事費用、通常の使用による損耗分の修繕費用まで賃借人の負担としており、不当な計算方法であると考える。

民法第606条の1で、修繕費用は貸主の負担とされている。通常の使用にて損耗、経年劣化したものがこれに当たる。

一方、原状回復に関しては、民法第616条、第698条により、借主に回復義務があるとされている。

しかし、借りた当時の状態に復する事が原状回復ではないことは明確であり、通常使用により経年劣化した部分の修繕は原状回復には含まれないとする考え方が一般的である。

つまり、経年劣化、損耗部分の修繕は民法第616条、第598条に定める原状回復には含まれないと考える。

退去後に賃貸物件を金額を掛けたやり方で修繕するのか、そうでないかも含めて、どのように修繕しようとも貸主の自由である。

貸主は、次の借主が入居しやすいように修繕するものであり、この修繕こそ民法第606条の1の

賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要なる修繕を為す義務を負ふ

という条文にあてはまるといえる。つまり、全額貸主の負担であると考えられる。

 


消費者契約法第4条1項1号について



一般的に、賃貸住宅の入居者(借主)は、退去時の精算金等について、納得した上で積極的に支払ったものではないと考える。

なるべく支払いたくないのは明らかであり、支払う必要があるとの認識の元に、仕方なく支払う、というのが本音だろうと思われる。

一方、貸し主である大家側とすれば、返還に応じられない理由として、退去時精算金等の精算方法や金額に対する異議の申し立て、質問等がないまま支払いが行われたこと、また、振込み終了時点で契約が終了しているため、以降の異議申し立ては無効であるとする考え方を示すことが多いようである。

入居者が異議申し立て、質問等をせずに請求金額を支払ったことが、退去時の精算方法や請求金額に同意した上で相手方に支払ったと解釈されたとしても、原状回復の範囲を超えた改装費用等、相手方から請求のあった退去時精算金等は契約上支払う義務がないことを充分承知した上での合意であるというなら別であるが、あたかも入居者に支払い義務があるかのような退去時前後における話の流れ、その後の退去時精算金等の請求により支払義務があるものと考え合意したとすれば、その合意は錯誤により無効あるいは詐欺により取り消せることになると考える。

この場合の契約とは、入居時に締結した住宅賃貸借契約ではなく、退去時における精算方法や負担する金額に関して合意した上で、入居者に支払い義務のある金額を相手方に支払うという退去時精算に関する契約を指すと考える。

以上により、消費者契約法第4条1項1号の「重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実であるとの誤認」により、入居者は本来負担する義務がない改修費用等を貸し主である大家に支払わなくてはならないという誤認があったとして、

同法第7条により、「誤認」したことを知ったときから6ヶ月間、合意した日から5年間は取り消して返還を求めることができると考える。

退去時精算に関する契約が締結されたとするのは、入居者が退去した日であると考え、その日より5年以内に返還請求を申し出れば、上記の返還を求めることが出来る期限に関する要件を満たしていると考える。

貸し主との賃貸借契約が既に終了していること、また、異議申し立て、質問等をせずに一度支払いに応じたことは、退去時精算金等の返還を求める上で、法的に何ら問題のないことであると考える。

以上により、一旦貸し主の請求通りに支払ってしまったとしても、返還を求めるのに充分な正当性があると考えられる。

 


国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の位置付け



「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とは、民間賃貸住宅における賃貸借契約は、あくまでもお互い(貸す側と借りる側)の合意に基づいて行われるものであり、いわゆる契約自由の原則により、その内容について行政が規制することは適当ではないが、原状回復に係るトラブルが頻発していることから、賃貸住宅標準契約書の考え方、裁判例及び取引の実務等を考慮のうえ、原状回復の費用負担のあり方について、平成9年当時において妥当と考えられる一般的な基準をガイドラインとして平成10年3月にとりまとめたものである。

ガイドラインは、賃料が市場家賃程度の民間賃貸住宅を想定しており、賃貸借契約締結時において参考にするべきものである。現在、既に賃貸借契約が締結されている場合は、一応、現在の契約書が有効なものと考えられ、契約内容に沿った取扱いが原則であるが、契約書の条文が曖昧な場合や、契約締結時に何らかの問題があるような場合の協議の参考とするものである。

賃貸借契約時において、契約書に原状回復についての条項がない場合などは、ガイドラインを参考にすることについては充分な正当性があると考える。

ガイドラインにおいては、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としており、いわゆる自然損耗、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃貸人負担としている。そして、原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に復することではないことを明確に定義している。

前述の「通常の使用」については、「通常の使用」の一般的定義は困難であるため、個別具体の事例を具体的に区分して賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしている。
(国土交通省 住宅局 「ガイドライン」による、摩耗、損耗の事例区分(表)参照)


:賃借人が通常の住まい方、使い方をしいても、発生すると考えられるもの

:賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの

(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)

A(+B):基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの

A(+G):基本的にはAであるが、建物価値を増大させる要素が含まれているもの


このうち、B及びA(+B)については賃借人に原状回復義務があるとしている。

経過年数の考慮については、前記BやA(+B)の場合であっても、自然損耗や通常損耗が含まれており、賃借人はその分を賃料として支払っており、賃借人が修繕費用の全てを負担することとなると、契約当事者間の公平を欠くなどの問題があるため、賃借人の負担については、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど賃借人の負担割合を減少させるのが適当であるとしている。

この負担割合の減少については、入居後概ね6年で残存価値が10%となるような直線または曲線を想定し、負担割合を算出するとしている。

入居期間が6年を超えている場合には、上記負担割合は最大でも10%程度とするのが妥当であると考える。また、そのような主張にも充分な正当性があるものと考えられる。





※この記事は、2003年7月にまとめたものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


民事調停 Q&A


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。


裁判所で民事上のトラブルを解決する代表的な方法として、訴訟と調停の2つの制度があります。
訴訟は、裁判官が、当事者双方の言い分を聞き、証拠を調べた上で、法律に照らしてどちらの言い分が正しいかを決める制度です。
調停は、裁判官のほかに良識ある民間人2人以上が加わって組織された調停委員会が、必ずしも法律にしばられないで実情にあった解決をめざして当事者を説得し、その結果、当事者が合意することによりトラブルを解決しようとする制度です。

ですから、証拠がある場合には裁判で戦い、証拠がない場合には調停で話し合う、という形が多いと思います。
ただし、前述の通り、調停は、必ずしも法律に基づいた決定ではないこともありますので、その点は注意が必要です。


ここでは、民事調停についてのQ&Aをまとめてみました。
(サイト内検索をご利用ください。)


最高裁判所のWebページに記載してある内容を参考にしています。
大事な事なので、間違いがあってはいけませんから。
平成15年7月3日現在の情報です。


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  調停の申立て手数料と裁判所に納める郵便切手はどのくらい必要ですか?

  調停の申立てをする際には,手数料と郵便切手が必要となります。
手数料は、収入印紙で納めてください。収入印紙は,郵便局で買うことができます。
他に、裁判所の中に販売所があったり、近所のタバコ屋で取り扱っていたりします。
裁判所の職員に聞いてみてください。最寄の販売所を教えてくれます。
手数料の額は、もめごとの対象となっている金額によって異なりますが、訴訟の場合よりも安くなっています。
金額の目安として、例えば、もめごとの対象の額が5万円までの場合には申立手数料は300円に、(これが最低額です)
以降5万円ごとに300円増額、30万円の場合には申立手数料は1,800円に、30万円以上は5万円ごとに250円増額、
もめごとの対象の額が100万円の場合には申立手数料は5,300円になります。
このように、申立の趣旨の金額により収める手数料が変わってくる、という事になりますので、
詳しくは最寄の裁判所に問い合わせてみてください。

郵便切手は,関係者に書類を送るためなどに使います。郵便切手の金額は,相手方の人数や書類を送る回数などによって異なります。
一般的には、80円切手5枚です。使わなかった分は、調停終了後の手続きにより返還されます。

 

 逆に、 調停の相手方になった場合はどうしたらいいですか?

  調停は、裁判官と一般の方から選ばれた調停委員が申立人と相手方の仲に入り,話合いで円満にもめごとを解決する手続です。
話合いを進めるためには、裁判所から通知された日時(呼び出し状に記載)に必ず出向かなくてはいけません。
病気などのためにどうしても行けない場合には、簡易裁判所の担当の裁判所書記官に相談してください。

次に、調停の前に「相手方」が準備することについて。
調停期日でもめごとの内容やあなたの言い分について説明できるように準備しておいてください。
契約書や領収書などもめごとの内容を説明するために役に立つ書類があったら、当日持参するようにしてください。

 

  呼出期日にどうしても裁判所に出向けない場合はどうしたらいいですか?

  調停は,話合いによりもめごとを解決する手続です。
従って、調停の相手方になった場合にも、呼出状により通知された日時に、必ず行かなくてはなりません。
もし、病気などのためにどうしても行けない場合には,簡易裁判所の担当の裁判所書記官に相談しましょう。
やむを得ない場合には、御家族や会社の従業員などを代理人にすることができる場合もあります。
また、期日を変更することもあります。

 

  調停が成立した場合の効果はどうなりますか?

  話合いがまとまると、裁判所書記官がその内容を調書に記載して、調停が成立します。
この調書には、確定した判決と同じ効力がありますので、原則として、後から不服を唱えることはできません。
この調書において、金銭の支払や建物の明渡しなど一定の行為をすることを約束した場合には、当事者はこれを守る必要があります。
もし一方がその約束した行為をしない場合には、もう一方は、調書に基づいて、裁判所に対し、強制執行の申立てをして、約束の内容を実現することができます。

調停調書を受け取るためには、簡易裁判所に申請していただく必要があります。
受け取るまでには、通常、調停終了後、1週間程度かかります。
詳しくは、担当の裁判所書記官にお問い合わせください。

 

  調停が成立しなかった場合、その後の手続はどうすればいいですか?

  調停では、お互いの意見が折り合わず、話合いの見込みがない場合には、手続を打ち切ります。
打ち切る前に、 「調停に代わる決定」が裁判所より出される事もあります。

調停が成立しなかった場合に、もめごとの解決をなお希望されるのであれば、訴訟を起こすことができます。
訴訟は,もめごとの対象となっている金額が、90万円以下の場合には簡易裁判所に、 90万円を超える場合には地方裁判所に起こします。
調停打切りの通知を受けてから2週間以内に同じもめごとについて訴訟を起こしますと、調停申立ての際に納めた手数料の額は、訴訟の手数料の額から差し引くことができます。

手続については、簡易裁判所の担当の裁判所書記官に問い合わせてください。

 

  調停に代わる決定とはどのような手続ですか?

  調停では,お互いの意見が折り合わず、話合いの見込みがない場合には、手続を打ち切ります。
また、話合いの見込みがない場合には、裁判所は、適切と思われる解決案を示すこともあります。
これを「調停に代わる決定」といいます。
「調停に代わる決定」は、お互いが納得すれば調停が成立したのと同じ効果がありますが、どちらかが2週間以内に異議を申し立てると、効力を失います。

その場合には,訴訟を起こすことができます。




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


調停申立書の書き方


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。


それでは、調停申立に必要な書類を準備していきましょう。


調停申立書


文字通り、調停を申立てる書類です。


簡易裁判所に雛型がおいてありますので、それに書き込んでいってもいいですし、自分で作成してももちろんOKです。


この書類は、調停の相手方へも送付されますから、それを考慮して書きます。


つまり、調停前に、相手に知られたくない事項、例えば、自分の主張を裏付ける重要な切り札についてなんかは極力記載しない方がいいです。





申立から、調停までは通常、約1ヶ月以上期間が空きます。


と、いうことは、ここで、いろいろ書いてしまうと、相手に法律相談なんかに行かれて、 こちらの主張に対する準備をされてしまう可能性があります。


それを避けるためにも、必要最低限の記載のみにした方が得策です。


それでは、申立書の項目について。


  1. 表題



    文書の表題です。

    「調停申立書」と、センタリングして書きます。



  2. 日付



    これは、きっちり、提出する日付ではなくてもOKです。

    あまりかけ離れた日付では受理されないと思いますが、2,3日のづれは問題ないみたいです。

    これは、右に寄せて記載します。



  3. あて先



    左寄せにて、「次のとおり調停を申立てます。」とし、改行して、「○○簡易裁判所御中」と記載します。



  4. 申立人住所、氏名、捺印、電話番号



    左寄せにて、「申立人住所」とし、かっこ書きで郵便番号、そのあとに住所を記載します。

    改行して、「申立人」とし、「氏名 ○○ ○○」のように記載して、そのあとに自分の印鑑を押印します。

    改行して、上記でかっこ書きした郵便番号の下辺りに、同じようにかっこ書きで「(電話番号)」とし、電話番号を記載します。



  5. 相手方住所、氏名、電話番号



    上記4と同じ要領で記載します。

    違うのは、印鑑を押さないことだけですね。相手の印鑑は押せませんから、当たり前ですが。



  6. 申立の趣旨



    相手方に、どのようにして欲しいのかを記載します。

    早い話が、「金返せ」なんですが、いついつ支払った物の内、いくらいくらを返還せよ、といった感じで記載します。



    (例)



    相手方は申立人に対し、下記1の(2)の物件の賃貸借契約終了時に退去精算金として支払った

    敷金、契約最終月の日割家賃残額、指定口座宛て送金した追加金額の合計金額、

    金○○○○○○円のうち、金○○○○○○円を返還せよ。



  7. 紛争の要点



    これがメインです。気合を入れて、慎重に作文してください。

    いわゆる「敷金トラブル」での調停ですから、一応、決まり事がありますので、それを書いた上で、あとは自由に作文して構いません。

    つまり、どうしてトラブっているのかを書くところです。



    以下のように記載します。







    紛争の要点



    1、 賃貸借契約の内容 申立人は、相手方との間で、(2)の物件について、次のとおり賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた。

      (1) 契約日   平成○○年○○月

      (2) 契約物件   所在  ○○県○○市○○町○丁目○番○号

                 名称(アパート名等)及び棟室番号  コーポ○○○○ ○○○号室

      (3) 賃借期間 ○年 その後、○年ごとに更新

      (4) 賃料    1か月金○○○○○円

      (5) 差入れた敷金の額 金○○○○○円

      (6) 敷金返還についての約定

              (例)未納家賃・損害金・その他賃借人が負担する債務を敷金から差し引いて残額を返還する。

                 債務を完済するのに不足する場合には、不足額を賃貸人に支払う。(注)

      (7) 原状回復に関する約定

              (例)本契約締結時には契約書に明確な記載なし(注)



    2. 賃貸借契約終了日     平成○○年○○月○○日



    3. 物件を明け渡した日    平成○○年○○月○○日

                                        」



    注:これは、あくまで例文ですので、当然、(例)のところは、それぞれの契約事項、事情により異なってきます。

      記載する項目自体はこの通りで構いませんが、内容は参考程度ということで。





  8. その他参考事項



    ここに、上記項目意外に、ぜひとも(?)調停委員に知らせたい事項を記載します。



    私の場合は、相手方の母親との契約でしたが、その後、お亡くなりになり、息子のA氏を相手方にしての争いとなりましたから、その旨を記載しました。

    そのほかにも、調停を申立てるに至った経緯や、返還金額についての明細なんかを記載しておくといいかもしれません。

    ちなみに私は、この明細は別紙にて提出しました。

    いづれにしても、前述の通り、あまり詳細なことは記載しないことです。



    逆に、裁判所で、「こういう記載をして欲しい」を言われたことだけを追加して書き足す、という方がいいと思います。



  9. 添付書類



    最後に、「添付書類」と記載して、添付する書類の一覧を書きます。



    まず、争いになっているアパートの登記簿謄本。これは必ず添付しないといけません。

    最寄の法務局で手に入れます。



    あとは、 賃貸借契約書の写しや、相手からの請求書なんかですね。

    この添付書類も、少ない方がいい訳で、用意だけはしておいて、調停の場において、必要な書類を出していった方がいいと思います。



    私の場合は、契約書を処分されてしまいましたので、契約証明書を作って、仲介人に押印してもらいました。それを添付しました。

 

物件目録

該当する物件(アパートですね、ここでは)の目録です。

この書類も、裁判所に雛形がおいてありますので、貰ってきて必要事項を記入すればOKですし、

自分で作っても構いません。

記入する事項は、前述の「登記簿謄本」を見ればわかりますので、よく読んで、必要な事柄を記入していきます。



これを、申立書の最終ページとして一緒に閉じて提出します。

だいたい、3枚くらいになるはずですね。

記載事項


  1. 表題



    「物件目録」と、センタリングして表題を入れます。



  2. 建物の表示



    「建物の表示」と左寄せにて記入します。



  3. 所在



    その下に、「所在」として、物件の所在地を記入します。



  4. 家屋番号



    同様に、「家屋番号」として、家屋番号を記載します。



  5. 種類



    「種類」と記載して、今回の場合は、「共同住宅」とします。



  6. 構造



    登記簿に書いてある通りに記入します。

    「構造」として、例えば、「軽量鉄骨造 亜鉛メッキ瓦葺 2階建」という感じで。



  7. 床面積



    「床面積」として、登記簿どおりに記載します。



  8. 付記



    「上記の建物のうち、○階 ○○○号室」

    「床面積  ○○、○○平方メートル」



    と記入します。

    アパート全体のうち、自分が住んでいた部分を書くわけです。

 

金額の明細



私は、最初、この書類は添付しなかったのですが、裁判所に求められて、あとから提出しました。

要は、申立書に記載した金額についての明細が分かればいいので、 計算した根拠まで書く事はありません。

前述の通り、相手に送られてしまう書類ですので、こちらの手の内を晒すような事は、極力避けてください。

裁判所で、もっと詳しい経緯がわかったほうがいい、と言われるかもしれません。

でも、「それがわからないと受理して頂けないのですか?」と切り返しましょう。

おそらく、「いや、受理はしますが・・・」といった答えになると思います。それでいいと思います。

詳しいことは、調停当日までにまとめて、調停委員に示します、という感じで、上手く逃げましょう。



何度もくどいようですが、提出する書類は、少なければ少ないほどいいんです。

証拠、根拠は、必要に応じて、小出しにした方がいいと思います。

 

ここに出てきた各書類の見本を見たい、という方はメールにてご連絡ください。

また、民事調停についてのQ&Aはこちら。




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


内容証明郵便の書き方


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

内容証明郵便というと、ちょっと前までは、専用の原稿用紙にカーボンをはさんで、同じ物を3枚作って郵便局の窓口で手続きする、というやり方が一般的でした。(というか、それ以外無かったと思います)

今では、便利な世の中になったもので、「電子内容証明郵便」というものがありまして、自宅で、PCの前にいながら、内容証明郵便を差し出すことが出来る訳です。
文章も、wordで作った、「*.doc」ファイルがそのまま使えますので、字の上手い下手も関係ありません。
これを使わない手は無いですね。窓口が開いているうちに、郵便局へ駆け込む、何てことも必要ないですし。


しかも、ワープロ文字、差出局が東京、ということもあってか、相手には威圧的に感じるようです。(相手にもよるでしょうが)まあ、それが返って相手を頑なにさせてしまう危険性もあるんでしょうけど。

書き方についてですが、のちのち、裁判、調停のお世話になる事も考えて、そのときに証拠として提出できるように、一定の項目を記載しておいた方がいいと思います。

私の場合は、一旦、請求通りに支払ってしまったあとでの返還交渉でしたから、文面もそういうことを反映した内容になっています。

請求はきたけど、まだ払っていない、という場合には、文面を変える必要がありますが、基本的には同じだと思います。

感情に流されずに、あくまでクールに書いたほうがよろしいかと。

あれこれ書くよりも、実際の文面を見ていただいたほうが一目瞭然、百聞は一見にしかず。
以下に、私の作成した文面を例として公開します。
項目や、数字の部分を各自の事例に合わせて書き直せば、それなりの文面になると思います。

実際に受け取った大家側の印象は、「私がプロの代理人(弁護士、司法書士)に依頼して、送ってきた」といった感じだったことが、後々の会話に出てきました。
それで、私が代理人を立てて交渉している、と思っていたんですな。

私はニヤニヤしながら、「すべて自分で勉強して、自分で作成したものですよ」と返しましたが。
実は、これ、調停申立書にも言えることでして、調停委員は、私が誰かに依頼して書類を作ってもらったと思っていたらしいです。
やはり、雛型に記入、という事ではなく、ワープロ打ちっていうのは、それなりの効果があるようです。

項目とか、数字部分は伏せてあります。
実物の内容証明を見てみたい、という方は、こちらよりご連絡ください。


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通   告   書

一、私は貴殿との間に、以下の項目を要素とする賃貸借契約を締結し、 平成○○年○○月○○日、目的物件を明け渡しました。
目的物件 集合住宅 ○階 ○○○号
名称   コーポ○○ ○階建て ○階 ○○○号室
敷金   入居時に金五万二千円也
仲介人  ○○○ ○○支店

二、退室時、○○○ ○○支店、○○課の担当者立ち会いで部屋を明け渡しました。

三、貴殿より平成○○年○○月○○日付けの請求書を受け取り、
退去時精算金 金○○万○○千○○円也を平成○○年○○月○○日に指定口座へ振り込みましたが、
この請求書については以下に述べる項目を除いて同意できるものでは無かった為、その後、過去の事例、判例等を調査しました結果、
以下のとおり敷金、および退去時精算金の返還を主張するものであります。

四、見積書にあるフ○○交換については私の過失によるもので認めます。
また、○○に関しては、国土交通省住宅局による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に示されている、
入居後六年間で残存価値一〇パーセントとする解釈に基づき、工事費の一〇パーセント分を支払うことには同意しても良いものと思います。
以上のその余の請求については全く過大なものであり、認められません。
ハウスクリーニングについては契約書、使用規定にある「退去時の清掃の負担」の範疇に入る可能性もありますが、
この見積書では部屋を全面的に改装するものであり、その場合ハウスクリーニングを当方が負担する必要はありません。

五、見積書記載の内容、および実際の工事では畳の交換ではなく、フローリング床への改装を行っている点などを考慮すると、
これは現状回復ではなく完全な改装です。

六、私は、平成○○年○○月より平成○○年○○月まで入居しましたが、壁紙等の汚れ、損傷は、私が喫煙者である事、子供がいる事を考慮しても、
経年劣化による事が大きいと考えています。

七、判例や実務の流れに於いては、通常の経年使用による老朽化の賠償は賃借人の責ではなく、家賃に含まれているものです。

八、以上、貴殿の請求の大半は理由がなく過大なものであり、
敷金、金○○万○○千円也および平成○○年○○月分家賃の日割り計算の残額、金○○万○○千円也と、
平成○○年○○月○○日に貴殿の口座宛て振り込んだ退去時精算金との合計金額、金○○万○○千○○円也より、
私の責任又は責任と思われる部分を除いた金額、
すなわち 金○○万○○千○○円也の返還を求めます。

なお、貴殿の誠意ある対応を求めます。この書面が届き次第、一〇日以内に内容証明郵便にてご回答下さい。
ご回答が頂けない場合、記載内容について認めたものと諒解致します。

平成○○年○○月○○日

○○県○○市○○町○○○○号 桃 

○○県○○市○○町○○○○号 ○○○○ 殿


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この文章を作るにあたり、「のび太の敷金返還奮戦記」 (http://www.dai-h.com/sikikin/sikikinindex.html)
の内容を参考にさせていただきました。この場をお借りしまして、御礼申し上げます。




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 最終章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

最終章
調停 (反省編) 


さて、調停も終わった後で、これまでの流れより、反省すべき点がいくつかあります。
終わってから気が付いた、ということで、「反省」なのですが、それよりも、まず、


 1.一度支払った退去精算金を、これといった証拠もないという結構不利な状態からでも6割程度取り返すことが出来た。

 2.調停前の話し合いより、20,000円程度多い金額を勝ち取った。

という事は、自分でも評価に値すべき事だろうと思っています。
ここまでを、たった一人で戦ってきた訳ですから。
我ながら、頑張ったな、と思います。


その上で、これから調停を向かえる、という方のために、私が「失敗したな」と思ったことなどを、これから書き出してみたいと思います。
参考にしてみてください。


1.相手方以外の同席を認めたこと。

本文中にも書きましたが、調停室に相手方A氏以外にも、仲介人B氏の同席を許してしまいました。
こういう事態は、極力避けた方がいいと思います。

事実、B氏は、調停室から控室に移るときには、A氏と共に、相手方控室へ入りましたから。
いくら、宅建業者としての意見を述べに来た、と言っても、実際にはA氏の弁護に来たのは明らかです。
同席を拒んだ上で、さらに、裁判所からの退去も申し出てはどうでしょうか。

そこまでは無理だとしても、せめて、控室は、申立人、相手方以外の第3の部屋を用意してもらうとか。
こちらにも味方がいるのなら別ですが、2対1では、正直、なかなか言いたい事も出てきませんでした。

これから調停を迎える方、くれぐれも相手のペースにはまらないように、気をつけてください。
相手はプロですから。



2.想定問答は「対 調停委員」で作るべし。

本来、想定問答というのは、相手方からの攻撃(口撃?)に備えて、「ああ言われたら、こう言う」事をまとめておくものです。
ですが、調停の場合だと、実際には相手方と直接話すことはあまりありません。
お互いの主張を調停委員に述べて、調停委員の判断で譲る(譲らせる)ポイントが決まる、という事です。

相手方も、あらゆる根拠を元に、支払いを拒んできますから、調停委員も相手方の言い分がもっともだ、と思えば、こちらに譲歩を求めてきます。

私の事例で言えば、「畳の交換代金」が、これにより譲歩せざるを得なくなってしまった、と言えます。
ガイドラインは地域性が考慮されていないため、市営住宅の慣例が「この地域での法律」のような扱いになってしまいました。

このときに、調停委員に対して、反論できたとしたら、状況が変わっていた可能性もあるわけです。

例えば、民法の解釈なり、市営住宅の精算方法も合法とはいえないのではないか、と反論するなり、何かしら意見を述べれば良かったな、と思います。

調停委員を味方に出来るくらい、正当な反論を用意しておいた方がいいと思います。

 

3.納得できない部分は同意しない事。

前述の通り、合意内容に、「ここで決めた以外の争い、請求は一切ない」事が盛り込まれています。
と、いう事は、後で「しまった」と思っても、もうどうしようもない、という事です。

私の事例でいうと、悔やまれるのが、やはり「畳」の一件です。

大筋で合意するが、畳の件のみに関しては納得がいかないので、日を改めて、再度調停の場を設けて欲しい、と言った意向を示せばよかったと思います。

「これ以外の争いは一切ない」と決まる前であれば、まだチャンスがあったようにも思えます。
これは、私の意見ですので、実際の調停の決まりでは違うかもしれませんが、 言いたい事は、

「調停をまとめようとして、納得できない事まで譲りすぎてしまった」という事です。

このあたりの考え方も、人それぞれだと思います。
多少譲っても、今日中にまとめたい、と思うかもしれません。
でも、そう思うのは、裁判所の中という特殊な場所での考えかもしれませんから、落ち着いて考える時間があってもいいかと思います。

どうしても納得がいかない部分は、その旨を主張すべきであろうと思います。

 

もう一回、調停を申立てる機会(そうそうあっても困りますが)があれば、もう少し上手く出来るかとも思いますが、人生最初の調停としては、まずまずの結果ではなかったかと思います。

当初、ゼロだった返還金を、半額以上も取り返せたわけですから。




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第8章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第8章
調停 (裁判官編)


 
調停というのは、2人の調停委員が話をまとめると、その合意内容についての文章を考えます。
そして、その文章を、裁判官が承認する、といった感じで読み上げまして、異論がなければ、ここで、本裁判の判決と同等の効力が発生する訳です。

通常の、金銭の貸し借りトラブル、交通事故トラブルなんかですと、事例別に、例文集がありまして、調停委員はこれを写せば言い訳なんですが、今回の私の、いわゆる「敷金トラブル」については、調停で解決した例がまだ少ないのか、 例文が載っていません。
で、調停委員は、一から文章を考えなければならず、ここで結構時間が掛かってしまいました。
この地域でも、今までこういった訴えはなかったらしく、裁判所にも例文がないみたいでした。


どうやら、この種のトラブルの第一人者になったようです。
他の店子さんたちは、みんな、泣き寝入りか、納得して支払ってるのか、それとも、私のように「錯誤」して、支払ってしまったのか。
おそらく、この地域でも、今後、この手の訴えは増えていくんでしょう。気になるところです。

 

さて、しばらくして、やっと文面がまとまったようで、関係者全員が調停室に呼び出されました。

調停委員1
「お待たせしました、文例にもなかったので、作成に手間取りまして、申し訳ないです。
それでは、今から読み上げますので、これで異論がなければ、裁判官に同席してもらって、あ、まれに、裁判官の判断によって、私が読んだ文章と異なることもあります。
裁判官が読み上げる文章が、いわゆる「判決」と同じですから、その上で同意するかどうか、確認されますので。」

いよいよ、この1年の集大成とも言える瞬間が近づいてきたようです。
調停委員1が、合意内容を読み上げていきます。
この合意内容については、裁判官が読み上げたものと、まったく同じでした。
機会があれば、あとで資料室に追加したいと思います。

内容は、裁判官が読み上げる場面で書いてますので、ここでは割愛させて頂きます。

さて、読み上げたあと、合意しますか、という質問になりまして、ここは、両者ともすんなり、それでいいです、っていう事になりました。
その後、裁判官を待つ訳ですが、他の調停室でも合意に至ったらしく、そちらへ先に行ってしまったようで、また待つことになりました。
調停委員2は、なにやら、手続き関係で、あちこち動いているらしく、退室しています。

今日は、待ってる時間のほうが長いくらいです。

ここで、暇つぶし?に、調停委員1に、先ほどから疑問に感じていたことを聞いてみることにしました。


「あの、今、合意に至りましたので、あくまで、参考というか、後学のためにお伺いしたいのですが?」

調停委員1
「はい、なんでしょう?」


「最初に、仲介人が同席したい、と言ったときに、もし、私が、同席を拒んでいれば、それは認められたのですか?
特に、私に聞かずに、調停委員さんの一存で、同席を認めてしまいましたが。」

調停委員1
「確かにね、一方が拒めば、無理に同席されろ、って事は無理でしょうね。
ただ、私たちも、宅建業界のことについては、詳しい事情までは知りませんから、業界の事情を聞くのに同席してもらう、っていう可能性はあるよね。」


「わかりました。私はいつも一人でこうやって話し合いをしているのですが、どうも、相手は複数人で出席なさるので、何かと、言いたい事も言えず、不利な立場でいると思ったものですから。
もちろん、調停が合意に至ったので、こうやって、お話している訳ですが。」


A氏 B氏
「・・・・・」

私が、最初に、同席を認めたくない、っていう話をしなかったのは、調停室への入室は拒めても、裁判所の敷地から出て行け、とまでは言えないだろうな、って思ったからです。
実際、そうでしょうけど。

ならば、退室した時にいくらでも、ネタあわせ、入れ知恵なんかが出来ちゃう訳ですし、同席するのと一緒だな、と。
裁判所に来ちゃった段階で、どうにでもなる訳ですからね。
これを拒むことも出来ないし。
交通事故なんかだと、保険会社の人が同席するケースが多いらしいです。

まあ、これも戦術のうち、と言ってしまえばそれまで。卑怯な手段と言ってしまえばそれまで。
いずれにしても、既に終わってしまった調停ですから。

次にやるときは参考にしようっと。(多分、次はないけど。)
こっちも味方を呼ぶとか、相手の味方の同席は徹底的に拒むとか。

でも、仲介人B氏の話によると、アパート経営者って、結構お年寄りが多いらしく、調停の仕組みとか自体が分からないっていうか、かなり「口語体」な話しか出来ない人も多いので、代わりに話しに来るケースも結構あります、との事です。
そういうときは、拒めない可能性もありますね、調停委員の判断で。

そんな話をしていると、調停委員2が私にこんな事を・・・

調停委員2
「あなたは若い割には言うことも的を得ていて、分かりやすくてよかったですよ」


「そうですか、それはどうもありがとうございます・・・・・(ん?)」

調停申立書には年齢を書くところはありません。
裁判所で住民票でもとって調べているのなら別なんですが、おそらく、「若い」と見られたのは「金髪」のせいなんだろうな、とひとり納得。
金髪の割りにはまともな事を言ってるので、「ほう」と思ったようですね。
誉められたんだか、どうなんだかってところですけどね。

さらに、調停委員1からも

調停委員1
「この申立書もよく書けてるね、誰かに頼んだの?」


「いえ、自分で作りました」

調停委員
「ほう、そうなの、じゃあ、ずいぶん勉強したんでしょう?」

良くぞ聞いてくれました、って感じです。
本当に、ずいぶん勉強しましたから。


「はい、かなり勉強しました」

認めてもらえたようで、なんだかいい気分です。
でも、金額はすでに決まっちゃいましたし、あくまで、事後の雑談なんですけどね。

 

さて、いよいよ、裁判官の登場です。

今まで本物の裁判官を見たことがない私は、裁判官の制服って、マントみたいな服なんだとばっかり思ってました。
普通のスーツなんですね、ビックリしました。
これじゃ、職員なんだか、裁判官なんだか、わからないですよ。
でも、気取った感じもなく、印象的には悪くないです。

席に着くなり、いきなり読み出しました。かなり急いでます。
もう、お昼をちょっと過ぎてます。 公務員なのに(^_^;)、ご苦労様なことです。

合意した内容は、大体こんな感じです。

相手方は、申立人に、解決金として、金90,000円なりを支払う義務がある。
支払い期限は、平成15年6月末日限りとする。
その他の債務、争いは一切ないものとする。


3.については、後で、「しまった」と思いました。そのときは気づきませんでしたけど。
その辺は、この後の反省編にて詳細を。

合意内容について書かれた書類は、基本的に発行されません。
必要な場合は、別途申請する事になります。
その場合は、書類の枚数により、1枚当たり150円分の印紙が必要になります。
期限までに支払いがなかった、という場合を除き、特に必要はありませんが、
「戦いの記録」として欲しい場合には、約1週間後に裁判所に電話して、問い合わせてみてください。

私も、合意文書にはんこを押したりするのかな、なんて思ってましたが、そういうことも一切ありませんでした。
ただ、裁判官が読み上げただけ、というのが正直な印象でした。



かくして、1年にわたった退去精算金の返還紛争は、調停での和解という事で決着しました。
申立人である私は、申立て時に収めた切手の余りがありますから、ということで、事務室に立ち寄り、その切手を受け取って、裁判所を後にしました。




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第7章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第7章
調停 (結審編)



94,000円。この金額は、正直、予想していませんでした。
当初の譲歩ラインは、ぎりぎり100,000円くらいだと思っていましたから、既に下回ってしまいました。
これ以上は何があっても譲れません。

でも、まさか、畳の交換代金が全額こちらの負担という判断になるとはねぇ。
青天の霹靂って、こういう時にぴったりの言葉です。やれやれです。

控室で待つことしばし、調停委員2が私を呼びに来ました。
三度、調停室へと入ります。

調停委員1
「はいどうも。でね、さっきの金額を向こうに伝えたんだけど、ハウスクリーニングのことなんだけどね。」

なにぃ?これ以上、私に譲歩しろと?

調停委員1
「きれいに使っていた人と、そうではない人とで、クリーニング代にどれくらい差があるのか、って聞いたんだよ、そうしたらね、綺麗に使っていた人だと、大体15,000円くらいですむっていう話なんだよ。
それで、今回は、請求金額が25,000円だよね、この差額をあなたが負担する、っていうことでどうかな。
金額にすると、向こうとしては、70,000円くらいを返してもいいって事なんだけど。」

もう、私としては、最終ラインを割っちゃってる訳ですから、これ以上譲歩するつもりはさらさらありません。
大体、70,000円では、この前仲介人の事務所で協議したときに向こうが提示してきた金額です。
全然譲歩してないのと一緒ではないですか。
こっちはこんなに譲っているというのに。


「こちらとしては、もうこれ以上は譲歩できませんよ、現状でもかなり減額している訳ですから。
それに、この金額では、向こうは全然譲歩していないことになりますよ。
前回、協議をした時には、こちら側が115,750円、向こうが72,000円っていうことで、その差が埋まらずに
今回のこの調停という事になった訳ですから。
私のほうは、さらに減額して譲歩しているじゃないですか、これ以上はちょっと無理ですよ。」

調停委員1
「え?そうなの、そういう話が出たのね、一回。」


「はい、そうです。」

調停委員1
(やれやれ、って感じの表情で)「向こうはそんな事言ってなかったなぁ、じゃ、相手方にも入室してもらって。」

調停委員2が、A氏とB氏を呼んできました。

調停委員1
「あなた、72,000円出してもいいって、一度言ってるの?それじゃ、この金額じゃ、譲歩してないよね、全然。」

B氏
「それはですね、話し合いの中で、私から、それくらいでどうか、っていう話をしましたけど、Aさんから出た金額ではなくてですね・・・」


「まあ、言った、言わなかったの話しになってしまえば、証拠はありませんが、私は確かに、Aさんの口から、72,000円くらいで、という話を聞きました。」

調停委員1
「Aさん、どうなの?」

A氏
「・・・えー、まあ、その、最初敷金分くらいは返してもいいという話をした後で、115,750円という話が出たので、それならあと20,000円くらいは出してもいいかなっていう話をしただけで・・・
あくまで、115,750円という金額に対しての話ですから・・・」

調停委員1
「でも、あなたは72,000円という金額は提示した訳ね?」

A氏
「・・・・・まあ、そういうことです。」

調停委員1
「なんだ、言ってる訳ね、じゃあ、全然譲歩してないじゃない?
それなら、桃さんが提示した金額ではどうなの?無理なの?」

B氏
「でも、こういう場に来た以上、話し合いは白紙からということになりますよね?」

まったく、余計なことを言いますね、こいつも。


「こちらも、140,000円から94,000円にまで下げているんですよ、この辺で考えてもらえないですかね?」

A氏
「・・・・・」

話が進まなくなってしまいました。
向こうとしても、70,000円では譲歩しているという根拠がなくなってしまいましたし、私も、これ以上下げる気はありませんから。
困ったのは、おそらく調停委員でしょう。お昼も近くなってきたし。
これまでの流れで、こういう時には、私に振って来る事になっています。

調停委員1
「本当はさ、調停委員がこんなこと言っちゃいけないんだけど、間を取って80,000円くらいの金額では、桃さん、どうだろうか?」


「こちらとしては、かなり譲歩しているのですから、先ほどの金額でお願いしたいです。」

調停委員1
「Aさんはどう?」

A氏
「・・・いや・・・・・」

煮え切らない野郎です。

調停委員2
「この辺りで決めないと、調停不調ということで、終了になりますが。」

やっぱり、お昼までに決めたいわけね。お役所ですから。

ここで、私に残された選択肢は

 1.あくまで94,000円以下は無理だ、という主張を通して、調停不調で、今後本裁判で争う。
 2.調停委員が提示した、80,000円台の金額で折れる。
 3.94,000円よりさらに譲歩して、少しでもこちらに返還される金額を多く確保した上で、合意に持ち込む。
の3つです。

1では、費用対効果の面でも、手間ひまが掛かるという面でも、得策ではないことは充分判っています。
と、すれば、残りは二つ。

2か3か、ということになれば、必然的に、3以外の選択肢はなくなります。
不本意ではありますが、それが、最良の答えということになります。


「わかりました、それでは、端数を切って、90.000円ちょうど、これでどうですか?
これだけ譲ったのですから、この辺で決めていただきたいと思います。」

調停委員1
「Aさん、どうかな?」

A氏
「・・・消費税とかなしで、90,000円ちょうどって事ですね?」

この期に及んで消費税の心配です。もうそんな事どうでも良くなってきましたよ、あたしゃ。

調停委員1
「(私に目配せしたあとで)そういうことだね、それを桃さんに解決金として支払うということで合意、ということにしてくれないかな?」

A氏、しばらく考えたあと、

A氏
「では、それでいいです。」

調停委員1
「じゃあ、その金額を、そうだな、今月中に・・・、桃さん、銀行口座へ振込みでいいんでしょ?」


「そうしてください。」

調停委員1
「じゃあ、今月末までに、桃さんの口座宛て振り込むということで。いいね?」

A氏
「わかりました」

調停委員1
「よし、じゃあ、調書を作るので、最後に裁判官が入室して、読み上げますから、それで異論がなければ調停成立ですから。
一度成立すると、これは、裁判の判決と同じ効力がありますから。」

そのあと、調停委員2に、私の口座番号を聞かれまして、それをA氏に教えています。

調停委員2
「送金手数料は、Aさん、負担してね。」

A氏
「はい。」

当たり前だよ、こんなに安くなっちゃったんだから、とは思っても、顔にも口にも出しませんが。

調停委員2
「では、調書が出来るまで、休憩しましょう、この部屋も暑いからね。お疲れ様でした。」

お世話様でした、という軽い挨拶をして、またまた控室へと戻ります。




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第6章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第6章
調停 (交渉編)


 
申立人控室へ戻った私は、煙草に火をつけて、これまでの流れを頭の中で整理しました。

第一段階である「時効」については、おそらく不問でしょうし、請求金額が一番高い「クロス張替工事代金」についても10年間入居していた、ということが結構効いているみたいですし。
まあまあ、楽天的イメージでいたのです。

既に、控室に入ってから、30分以上経過しています。

その間に、他の調停の申立人、同席者などが入れ替わり立ち替わり控室に入ったり、出て行ったり。
他の事件の概要も、会話などでなんとなく分かっちゃいますね。
行政書士?かなんかの「先生」っぽい人に、怒られてる申立人とか。
どうやら、以前の打ち合わせで言われていた、必要書類を用意して来なかったらしいです。
あとは、交通事故の当事者と、保険会社の人、という組み合わせとか。
いずれにしても、他の組はみんな誰か連れてきてますね。
1人で立ち向かう、孤高の戦士は、どうやら私だけのようです。

なんて事をぼんやり考えていましたが、まだ呼びに来ませんね。
ちょっと退屈してきた頃、やっと、お呼びが掛かりました。この間、約40分くらい。
A氏サイドと調停委員が、かなり、込み入った話をしていたんでしょうね。

入室直後、調停委員から、今までの楽観的な気分を一転させれる一言をお見舞いされます。

調停委員1
「桃さん、どうも、お待たせ。
でね、向こうは、50,000円ちょっと、これ位でどうだろうかって話しなんだよ。
畳の交換代金、これは、この地域での慣習というか、例えば、市営住宅でも、退去時に入居者負担で交換してるんだって。
そうするとね、これは、不当な請求ともいえないんだよねぇ、公共の住宅では入居者負担、民間だと貸し主負担、ってことでは公平とは言えないしね、これは入居者が負担するということを飲んで欲しいんだよ。
それと、クロス工事、この件はね、DK部分の汚損については、入居期間を考慮すると、入居者負担では公平ではないということで、DK部分は貸し主が負担する、ということでどうかな?
そうするとね、 こういう金額になって来るんだけど、どうかな?」

どうもこうも・・・
それじゃ、DKのクロス工事以外、ほとんどこっちの負担じゃないの?


「ちょっと待ってくださいよ、それでは、こちらの請求金額とかなり開きがあるじゃないですか、そんなの飲める訳ありませんよ。」

調停委員1
「まあね、そうだろうね、では、あなたとしては、どういう根拠でこの(申立書に記載してある請求金額のこと)金額を出したのかを説明してもらえる?」


「はい、(ごそごそと準備書類を取り出して)まずですね、ご存知のとおり、クロス工事に関しては、国土交通省のガイドラインを元に計算しています。これは、入居後6年で残存価値が10%となる計算方法によります。消費税は、項目別に算出した場合と、総額で算出した場合とでは多少違いが出てしまいますが・・・」

調停委員1
「消費税は今はいいや、最後に金額が出てから計算すればいいから。」


「そうですか、それと、フラッシュドアに関しては、100%、こちらの責任で、全額負担することで争いはありません。」

調停委員
「そうすると、残りはすべて貸し主負担であると?」


「もちろん、これは、こちらでの解釈で計算した、最大の金額ですから、ここから譲歩するつもりで来ています。」

調停委員1
「では、どれ位の金額なら出しても言いと思ってるの?」


「・・・・・クロス工事と、ハウスクリーニング代金の20%を負担するということでどうですか?」

調停委員1
「そうすると・・・・」

電卓を取り出して、計算を始めました。
こちらの計算では、127,000円位になるはずです。

このとき私は、請求金額からの逆算で、少しずつ譲歩していくつもりで、まずはこんなもんかな、
という金額を言ったはずなんですが、ここで誤算というか、勘違いというか、言葉のマジックにはまっちゃったというか。

・・・「畳の交換代金」が入ってなかったんですね、この金額には。

この段階では、私はまだ気が付いていません。調停委員との話が続きます。

調停委員1
「そうすると、94,000円くらい返してもらえればいい、っていうことだね?」

へ?何でそういう金額になるの?


「えーと、そうなりますか?あれぇ・・・」

調停委員
「だって、あなたが言ったことは、20%は払ってもいいって事でしょ、そうすると、クロス工事とハウスクリーニングの合計が90,562円、
その20%が56,192円、畳の交換代金が44,100円で、合計すると・・・」


「ちょっと待ってください、畳の交換代金は含まれてないんですけど。」

調停委員1
「だって、これはあなたが負担するようなんだよ。」

なんか、もう決定しているようです、畳代はこっちで負担だって。
なんたる事なんざんしょ。


「そう言われましても・・・10年間住んでいた訳ですし、著しく汚損した場所はない訳ですし。全額こっちの負担というのはどうも・・・」

調停委員1
「これはねぇ、この辺ではみんな入居者が負担しているっていうんだよ。そうすると、どうしようもないよねぇ。」

どうもこうも、そっちで決めたんだろうが、って感じですが、
おそらく、先ほど私が退席したあと、A氏とB氏で、この辺の宅建業界の実状とか、慣習なんかを熱く語ったんでしょうね。
すっかり、調停委員はそのペースにはまっちゃっています。

これもおそらく、ですが、A氏側としては、金額的にこれくらいは返す、っていうのが先にあって
それに、後から理由付けをして、この金額を出してきたと思われます。
ちょうど、敷金に預けたくらいの金額ですからね、向こうが提示してきたのが。


「こちらとしては、あとから追加で支払った分は返還して頂きたいと思って来ています。
つまり、115,750円は払って欲しいと。」

調停委員1
「でもね、ここは裁判所だから、根拠がない金額は出せないから、何かしらの根拠がないと。」


「どうしても、畳の交換代金は私が負担するようなんですか?」

調停委員1
「これはしょうがないだろうねぇ。」

調停委員2
「桃さん、ここは、これ以上引っ張らずに、ここでまとめた方がいいですよ。
裁判に移行すると、費用も、手間ひまもこんなもんじゃないですから。ある程度譲っても、ここで決めちゃった方がいいと思うよ。」


「はい、それはわかってます。」

まあ、その辺は重々承知はしているんですがね。
これまた、あとからの推測ではありますが、調停委員としては、A氏はなかなか譲歩する人間ではない、という判断だったのではなかろうか、と。
つまり、A氏が譲歩しない以上、調停が決裂してしまう。まとめるには、私のほうを説得するしかない、という感じの判断です。
心情的に訴えられたら、向こうはオヤジ同士、意気投合しても不思議はありません。
いくら公平な調停委員でも、そこら辺は人間ですし、根拠があれば、請求を断ることも簡単ですから。
今回の場合は、それが、「市営住宅での事例」だったわけですね。

調停委員1
「どうだろうか、じゃあ、この金額を向こうに伝えるということで、いいかな?」

いいとも、って言うしか選択肢はなさそうです。いまさら、畳代を払うなら、クロス代金は10%負担で、とも言えないし。


「分かりました、じゃあ、その金額でお願いします。
こちらとしては、当初よりかなり譲歩していますから、その点を考慮して頂きたいと思います。」

調停委員1
「では、また一旦控室で待っていてください。呼びに行きますから。」

調停委員2
「今度は早いですから。」

まあ、金額的な問題しか残ってませんからね。
また控室へ移動です。
控室へ行く度に、こんなに気持ちに変化があるとはね。

これ以上は、こっちとしても譲歩できませんから、何とかこの金額ラインは維持しないと。




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第5章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第5章
調停 (開始編)



さて、いよいよ調停当日となりました。

10:00の呼び出しですので、多少早めに出掛けることにしました。
こちらから申し立てをしたのですから、常識的にも遅れる訳には行きませんし、待合室で、想定問答にもう一度目を通してもいいかな、とも思いましたし。

自宅から裁判所までは歩いても10分掛からない距離。
でも、今回は、手持ちの書類なんかもあるし、車で行くことにしました。

案の定、早く着きました。約25分前。

で、裁判所の駐車場に車を停めようと、バックして枠に収めていたとき、ややや、見覚えのある風体の中年男性を助手席に乗せた車が目の前に。
運転手の中年女性も、これまた見覚えのあるお姿。

A氏と、C子氏のご登場です。

時間より、だいぶ早めに来たようですね、向こうもやる気まんまんと言ったところでしょうか。
A氏を降ろして、C子氏運転の車は帰っていきました。
これから調停を行う相手に、まさか裁判所の玄関前で会うとはねぇ・・・
なんて素敵なタイミングなんでしょ。
しかし、ここはクールに、軽く会釈だけして、裁判所の中に入りました。

受付に挨拶して、2階にある申立人控室へと入りました。

カラオケ屋の一部屋くらいの広さです。喫煙室が併設されています。
喫煙者の私としては、 いまどき、ありがたいご配慮。
当然、まっすぐ喫煙室へ入り、まず(-。-)y-゚゚゚です。

予定通り、想定問答や、申立書なんかにもう一度目を通しながら、調停開始の呼び出しを待ちました。

10:00ちょっと前でしょうか、予想外の人物が私を訪問します。
仲介人の担当者、B氏です。A氏め、呼んだな。

B氏いわく、
「仲介人として、また、宅建業者として、意見を求められる場合があると思いまして、出来れば同席させて頂こうと思ってます。」
言い訳としては、まあまあですね。
これは間違いなく、A氏に頼まれてますね。呼び出し期日も知ってるわけですし。


B氏と2,3会話を交わしているうちに、調停委員から、開始するので調停室に入るように呼び出されました。

調停室に入ると、既にA氏が中にいました。他に調停委員が2名。
おかげさまで、相手の味方と同時に部屋に入るという、なんとも間抜けな展開になってしまいました。

一通りの挨拶を済ませて、調停委員1が申立書に目を通します。

調停委員1
「・・・えー、要するに、払い過ぎたと思われる退去精算金を返還して欲しいと、こういう事実関係でよろしいですね。」


「 はい、そういうことです。」

A氏
「ちょっと待ってください、私としましてはですね、一度納得して支払ってもらったという事で、既に契約は終了していると思っている訳ですよ、それを半年以上過ぎてですね、返してくれと言われましてもね、これは無効ではないのかと思いますが・・・」

やっぱりそう来ましたか、想定どおりの展開です。この展開に対応する用意は万全です。ところが・・・

調停委員1
「あのね、民法の解釈からしても、まだ時効って事はないですよ。
余計な支払いをしてしまったな、と気が付いて、そのあといろいろ調べて、そうしたら、人間の知恵が回るのには半年くらいは掛かっても、これは長すぎるとは私は思わないけどねぇ。」

A氏
「・・・・・」

調停委員1
「この件について、桃さん、どうですか?」

おっと、予想だにしなかった展開。
こっちが言いたい事を言ってくれた感じです。好感触>^_^<


「はい、私の考えとしましては、これは、錯誤により支払ったもので、消費者契約法第4条1項1号により、返還を求めることが出来ると考えています。
また、 同7条により、時効前に返還交渉を開始していますので、何ら問題はないと考えています。」

この間に、調停委員1に電話が入ってしまい、話は調停委員2が聞くということに。

調停委員2
「分かりました、エーとですね、消費者保護法の、何条でしたっけ?」


「(おいおい、ちゃんと聞いてろよ)第4条の1項1号です。」

調停委員2
「それにより、返還を求められる、と。」


「そうです。」

私からの話を聞き終わったところで、調停委員1の電話が終わり、調停委員2がいきさつを申し送っています。
どうやら、調停委員1のほうが、上司というか、メインな存在で、調停委員2はサポート的存在のようです。

調停委員1
「通常の考え方ですとね、桃さんは10年住んでいた訳でしょう、そうすると、壁紙の交換なんかは貸し主負担で修繕する、というのが一般的ですけどね。それと、ハウスクリーニング、これも、ガイドラインでは貸し主負担だよね、その辺は仲介人、承知している訳でしょう?」

B氏
「もちろん承知しています。しかしですね、顧問弁護士に相談したところ・・・」

ん?顧問弁護士なんていたの?

B氏
「ガイドラインというのは、悪質な大家に対して作成されたもので、法的な拘束力は・・・」

やはり、そう来ましたね。こちらも予想通りの模範解答というか。
まあ、前々から、そんな事言ってましたからね。

調停委員1
「でも、知っていた訳でしょう、ガイドラインによる計算方法は。」

B氏
「・・・・はい。」

調停委員1
「知っていたのに、こういう請求を出した訳ね?」

なんか、非常に好感触になって来ました。
私が発言する間もなく、彼が言いたいことを言ってくれちゃってます。
心の中でガッツポーズ、しかし、表情はあくまでクールに。

そのあとで、A氏とB氏、とんでもない発言を始めます。

A氏
「しかしですね、桃さんの場合は、通常の使い方では考えられないほど汚されてまして・・・」

なんだと!言ってくれるね。今まではそんな事、一度も言わなかったくせに。

B氏
「そのままでは、明らかに、次の借り手がつかない事は明らかでして・・・」

調停委員2
「でもね、これ(壁を指差して)なんてね、(償却期間は)5年だよ、普通。」

調停委員1
「まして、10年の入居でしょう、これを入居者の負担とするのは、どうかと思いますよ。」

B氏
「それで折半ということにしているんですが・・・貸し主は、30万円以上出してますし。」

と、明細を出してきました。

調停委員1
「どれどれ、これね。」

目を通しています。

A氏
「私もですね、好きで賃貸住宅を経営している訳ではなくて、親も高齢になってきて動けなくなりますし、
畑を遊ばせておくのももったいないので、こうしてやっている訳で、納税も高額なものになりますし、
決して儲かっている訳では・・・」

調停委員1
「それは、あなたの都合でしょう。
だからといって、入居者には関係ないでしょう、そういう事は。」

相手側が言い訳をして、それを調停委員に諭される展開が続いてきました。
調停委員1も、なんとなくイライラしてきた感じです。

調停委員1
「よし、それじゃあねぇ、桃さん、あなたの言い分は大体わかったから、 一度席を外してくれないかな?
こちら(A氏とB氏)の言い分を先に聞いちゃうから。」

調停委員2
「呼びに行くまで、控室で待っていてください。」


「分かりました。」

やれやれって感じです。
ここで、一旦退席して、控室へと戻りました。

これまでの感触としては、なかなか良かったので、もしかすると、結構な金額を取り返せるかなぁ、と思っていたのですが、やっぱり、調停っていうものは、お互いの言い分をよく聞いた上で進みますので、そう甘いもんじゃありません。

わたしも、それを思い知らされることになります。





※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第4章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第4章
交渉決裂
 


やっと、という感じで行われた協議です。
この協議に至るまで、交渉開始から半年以上経過しています。

この協議の場に、A氏は奥方C子氏を同伴してきました。
以前、小耳にはさんだ話では、どうやら、尻に轢かれている感がありそうで、この返還交渉も、どちらかというと、C子氏のほうが「返さなくてもいい」意見だということです。なるほど、一筋縄では行かないようなお顔であります。

こちらは、1人で敵地に乗り込んでいるというのに、A氏側は、奥方、B氏の3人体制。
3対1では、私のほうが多少部が悪いのは明白でした。
B氏は、一応、紳士的に中立な立場としての参加、ということでしたが、私が感じたのは、精算方法そのものを否定されてしまうと、今後の仲介業務に支障があるのでしょう、正当な計算方法であることを強調しています。
と、いうことは、どちらかというとA氏よりの立場、ということに変わりはなく、やはり3対1での交渉である、ということです。

私は前述の「返還希望金額についての明細」と題する文書をA氏に見せて、(以前、仲介人に渡してあるのに、仲介人はどうやら見せなかったらしいですね。やれやれです。)
金額についての算出方法など、精いっぱいの説明をして、返還してくれるようにお願いしました。
また、請求額を減額譲歩して、何とか話をまとめようとしました。

ここでも、A氏の主張は、
「一旦払ったんだから、もう時効」説です。
多分、それくらいしか、反論のしようが無いんでしょうね。

金額については、A氏も、最初は渋っていたのですが、一応の金額が提示されました。
敷金分52,000円でどうか、だそうです。
これじゃあ、話になりません。こちらとしては、敷金と、日割家賃の残額くらいは譲ってもいいかな、っていう思いでしたから。
つまり、私の返還希望額は、この時点で約110,000円にまで譲歩していた訳です。

それじゃ話しにならない、っていうことで、A氏に訴えたところ、それでは、あと2万上乗せしてやってもいい、なんていいだしました。
本当は払いたくないけど、いろいろ言われるから、それで最大最終の金額提示だそうです。
と、いうことは72,000円。まだ金額に開きがあります。

実は、今回の協議では、予め、譲歩する限界を決めていまして、それを下回るような場合は、裁判所のお世話になるという決意で臨んだ話し合いです。
その金額が110,000円ラインというわけでして、これ以上、こちらとしても譲歩は出来ません。
A氏との話も膠着状態となり、これ以上お互い譲歩は出来ない訳ですから、和解も出来ません。
ここで払ってくれないと、裁判所での決着になりますよ、という話も出したのですが、A氏は、72,000円で納得できないなら、裁判も止む無し、という考えだそうで、それでは、裁判所で決着をつけましょう、ということになりました。

交渉は決裂しました。

早々に協議の場から退席した私は、正直、はらわたが煮え繰り返ってましたが、ここで熱くなってもしょうがありませんから、どのような手段で訴えるか、その検討に入りました。
そして、出た答えが「調停」です。

すでに、最後の内容証明郵便にて、A氏は「返還には基本的に同意」しているのですから、あとは金額の問題だけですし、本裁判になると、私には分が悪い事もありましたので。

例えば、入居時の写真とか、退去時の写真とか、そういう「証拠」と呼べるようなものが一切ない事。
元々、争うつもりでアパートを借りていた訳ではないので、しょうがないといえばしょうがない事です。
こういう場合は、調停である程度の金額を払ってもらって和解した方が得策といえます。
つまり、A氏が提示した最高額、72,000円より1円でも多く取り返せれば
調停を申立てた意義があるという事になります。
実際には、申立て費用も掛かりますし、手間ひまも掛かりますから、最低でも1万円以上は上乗せしたいところですが。

(調停申立の詳細は別ページにあります。)




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第3章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第3章
内容証明郵便での交渉



諸先輩方の事例を拝見すると、内容証明を送った段階で、ビビッて返してくれた、という大家も多いみたいなので、少しは期待して交渉を開始した私ですが、なかなかどうして、A氏も負けてはいませんね。
お金にはとことんきっちりしているようです。

内容証明の文面等は、「内容証明郵便の書き方」 を参照してください。
(※2005/01追記:サイト内検索で探してください)


住んでいたアパート名称、部屋番号、それに返還して欲しい金額や、その根拠などを記載します。
いつまでも返信を待つ訳にも行きませんから、返信の期限を設けます。

つまり、○○日以内にご返信がない場合には、この文面記載の内容に同意したものとします、という一文を添えておきます。
私の場合は10日に設定しました。


10日目ぎりぎりになって、A氏より返信が来ました。
内容証明用の原稿用紙に手書きです。(ご覧になりたい方はこちらからご連絡ください。)

要点としては、

1.私が請求通りの金額を支払った時点で契約終了により本返還請求自体が無効であるとの主張。
2.退去時精算金請求の根拠について、宅建業界の慣習であり、正当なものであるとの主張。
3.私に対して、「一方的に主張しないで欲しい」、といった文言。
4.目的を明確にしない「協議」の提案。

まあ、1と2については、向こうもいろいろ考えたり、仲介人に聞いたりして、それらしい反論をしてきた、というところでしょう。
問題なのが3と4でして、A氏は、前述している、私が最初に返還請求をしたときに設定された協議に出席せず、まるっきり退去時精算金等を返還する意思はなく、したがってA氏本人が出席して協議をする必要もないと仲介人B氏を通して私に連絡してきたにもかかわらず、「一方的に主張するな」とか、今度は「協議をしましょう」とか、まあ、よく言えたもんです。

私としては、A氏が協議に出席せず、また、返還には応じられないとしたため、和解に向けて協議する意思がないと考え、文書による返還請求を開始したのですから、協議に出席せず仲介人に協議を一任した上で、私の返還請求には一切応じないと通告してきたA氏の行為こそ一方的といえるものであると考え、その旨をA氏宛てに再度内容証明にて通知しました。

2通目の内容証明の内容の要点は、私が文書による返還交渉を開始した直後に、目的を明確にしない協議
(だいたい目的はわかっているのですが、ここでは敢えて、こういう表現とします)
の提案を通告されたことに強い不信を感じ、 A氏に対して、主張及び認識についての反論を述べ、また、進展のない協議を避けるための確認事項として、

1、 本返還請求に対して協議を行わないまま一方的に返還には応じないとしたのはA氏側であること
2、 A氏は私が請求している退去時精算金等の返還をする意思があり、A氏が提案している協議の目的は、返還金額の確定であること

の二点の認否について確認し、A氏が認めるのであれば私は本件の和解に向けて、A氏が提案する協議を受諾する、といったものです。

もう一度協議したところで、A氏が、「払わないよ」ということでの確認的意味合いの協議であるなら、私には何のメリットも無いばかりか、かえってマイナスな話し合いになってしまいますから。
この辺から、最終的には、裁判所のお世話になるようかな、という考えが芽生えてきました。

その後、私とA氏は、3回(調停のときに、「そんなにやり取りしていたの」、と調停委員に言われた位です)にわたり、内容証明郵便にて交渉しましたが、A氏は、本返還請求の中核ともいうべき、私に対する支払い意思の有無については明確な回答を避け、ひたすら自己の主張と精算方法の正当性を述べ、また、目的を明確に示さない協議の提案を繰り返し通告してくるのみで、本返還請求が進展しない重大な理由となりました。まったく、ああ言えばこう言う、のらりくらりとかわされ続けたわけです。

この間にやり取りした内容証明も公開しますので、ご覧になりたい方はこちらから。

私は、本返還請求の和解を目指し、これまでに再三、内容証明郵便により、A氏に対して退去時精算金等の返還を求めてきましたが、このままではいたずらに時間が経過するのみで、本返還請求の進展は得られないと考えました。
そこで、A氏に対し、訴訟準備に入ることを通知した上で、和解のための私からの最終提案としての『A氏が提案する協議』の受諾条件として、

 1.(支払いの意思の有無について)貴殿は、基本的に私に対し退去時精算金等を返還する意思がある。
 2.(協議の目的について)貴殿の提案する協議は、本請求に対する返還金額を決定するために行われる。但し、貴殿は、協議において、私の返還請求には一切応じない旨の主張は行わない。


の二点を提示し、この二点について認めた上で、協議を提案するのであれば、協議の日時、場所を、協議開催日の10日以上前に私の手元に届くように内容証明郵便にて通達し、私はその書面をもって、A氏がこの二点に対し認めたものとして、協議の提案を受諾する考えであることを伝えました。

この通知に対して、A氏より協議日時を指定する内容証明による通知があり、この書面により、A氏が私の主張する返還請求を基本的に認めたくれたものと認識しました。いやあ、ここまで長かったなぁ・・・
ところが、A氏はその後、都合により、協議日時の変更を申し出てきました。

なんとも、一回では済まないお人のようで。

私はこれを承認して、(既に、最初の日程で休暇を取ってしまったのですが、しょうがないですね。その辺はいやみっぽく返信してやりました。)
平成15年4月6日に仲介人の事務所にて仲介人B氏を交えて返還金額についての協議を行う事になりました。



※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第2章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第2章
交渉開始



既に、退去から5ヶ月が過ぎようとしていました。
ちょっと時間が掛かったような気もしますが、何かアクションを起こそうとするのには、それ相応の気合とか、準備とか、色々必要ですので、いたしかたありません。

私は、まず、賃貸契約の仲介人へ連絡し、退去時精算金等の返還を求めました。
というのも、大家であるA氏に対してお金を払った、というよりは、直接動いていた仲介人に払った、という感じが強かったので。

仲介人は、あくまで仲介人なので、返してくれるかどうかは大家であるA氏次第ですよ、と言いましたね、やっぱり。
まあ、当然でしょう。
で、仲介人が言うのには、A氏 に連絡の上、三者により、仲介人の事務所にて協議を行ってはどうか、と。
話をして、A氏が納得しなければ、もちろん返してもらえないでしょうから、私は、その案に同意し、A氏への連絡や、協議日時の決定などを仲介人に依頼して、その日は家に帰りました。

その後、決定した日時である平成14年11月9日、協議に出席するべく、私は仲介人の事務所に出向きました。
事務所に入るなり、私は、仲介人より、
「A氏は本日都合が悪く出席できないが、退去時精算金については一切返還しないとの意向であり、協議については仲介人が一任された」
旨を伝えられました。なんとも舐められたもんです。
要は、「こっちはビタ一文返すつもりはないから、Bさん、適当に相手しといてよ」って事ですからね。
もし、真剣にこちらの話を聞く姿勢があるなら、都合が悪いにしても、仲介人に任せっきりって事はないでしょうし。
別な日に替えてくれ、っていう選択肢もあったわけですし。
やれやれです。

直接あって話が出来ない以上、仕方ありませんから、仲介人B氏に話をすることになります。
私がA氏に退去時精算金等の返還を求めていることを伝えた上で、
返還を求める金額やその計算方法についての主張及び根拠を述べるとともに
「返還希望金額についての明細」と題する文書を示しました。
Aさんに見せたいので、頂いてもいいですか、との事でしたので、この文書(表)は、仲介人にあげました。

で、この表に書いてある計算方法は、あくまでも、こちらで算出した「目安」なので、
A氏が返還に応じてくれるんだったら、譲歩して、金額を下げてもいいよ、っていう話をしました。
この段階で、私の心の中に、一応の目安として、最後に振り込んだ分くらい返ってくればいいかな、っていう、「最低ライン」が出来上がりました。
この最低ラインが、今後の交渉における一つのポイントとなっていきます。

仲介人B氏は、
「では、桃さんの主張を、Aさんに伝えますから。まあ、一切返還しないっていう話でしたけど、
私のほうでも、少し考え直すように、一応説得と言いますか、やってみますから。」
と言ったような感じで、私に返答してくれました。

計算方法については、おそらく、仲介人側で算出したんでしょう、その正当性を繰り返し言ってましたね。
「この地域の宅建業界の慣習に基づいて計算してますから、不当とか、悪徳とか、そういう風に思われるのは心外だ」、と。
私としても、そういうことを言っているのではなく、払いすぎてる部分を返してくださいよ、って言ってるだけですから。
今までは、そういった、慣習による計算方法でもトラブルにならなかったんだったら、それはそれでいいでしょうし。
仲介人とか、大家が悪徳だとかって言ってる訳ではないので、返してくれればそれで万事OKですからね。

ちょっと話がそれましたが、A氏との話し合いの結果については、後日、電話にて連絡をくれることになりました。


電話を貰うまでに、結構な時間が経過していたような気がします。
今となっては、この辺の記録はしていなかったので、「記憶」に頼るしかないんですけどね。

仲介人B氏からの電話は、ある程度は予想していた答えでした。

「桃さんの主張をAさんに伝えたのですが、Aさんはやはり、退去時精算金等の返還には一切応じないとの事なんですよ、
一度、納得して支払ったのだから、それで契約終了だろう、っていう話です」

なるほどね。まあ、模範解答でしょうね。

ここでのポイントは二つ。
ひとつは、「納得して支払った」訳ではないこと。
払わなくてはいけないのかな、と思ったから、仕方なく払ったまでです。
もう一つが、「契約が終了している」事は、この返還交渉には関係ないんじゃないの?って事です。
このことについて、詳しくは後述しますが、A氏は、最後の最後まで、この「契約が終了してるんだから、返還交渉自体が無効」説を言い続けてました。

話し合いにも来ない、こちらの主張を伝えてもらっても一切応じない、と来たら、
あとは、文書により、直接交渉を始めるしかありません。
文書でやらないと、後々、「言った」、「言わなかった」でもめる原因になりますから。

直接交渉には内容証明郵便を使うことになります。



※この記事は、2003年7月にまとめたものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第1章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第1章
支払わなければよかった!
 

私は、平成4年の7月に今回の舞台となるA氏の母親が経営するアパートに新築直後に敷金52,000円を預ける等の賃貸借契約をして入居しました。

約9年10ヶ月の入居の後、私は平成14年5月20日にこのアパートを退去しました。
この時の賃貸借契約書には、退去時における敷金の取り扱いや、原状回復の解釈について明確な記載はまだありませんでした。
もっとも、いわゆる敷金トラブルが表面化してきたのは最近のことですから、当然と言えば当然です。

私が退去した平成14年5月20日に、賃貸契約の仲介者である、「○○○○  ○○支店」(以下仲介人)担当者により、現状の確認が行われ、同担当者立ち会いの元で鍵を返却し、同住宅を引き渡しました。
その際に、仲介人の要請により、本賃貸借契約書を仲介人へ返却しました。
既に終了した契約書なので、こちらで処分する、との事でした。
今思えば、こういう書類は、渡すべきではなかったのですが。


こうして、約10年住んだアパートに別れを告げた訳ですが、このときの考えとしては、まあ、多少費用は掛かるかもしれないけど、そんなに大きい額ではないだろうな、って感じでした。


ところが・・・


賃貸人であるA氏の母親は、5月31日に仲介人を通じて、貸室の清掃及び各種工事との名目(以下、退去時精算金等)にて、183,750円を私に請求し、敷金及び平成14年5月分の日割り家賃の残額をこの支払いに充てるとした上で、更に不足分である115,750円の支払いを求めてきました。
名義上は、A氏の母親所有となっているこのアパートですが、入居当時はお元気だったA氏の母親も、その後、高齢のため若干痴呆症状も出てきてしまったとの事で、 実際は、息子であるA氏が経営の実務を行っています。

ビックリしましたね、この金額には。
私は、当然この請求金額及び精算方法に納得がいかないため、A氏(正確には、A氏の母親ですが、実務をA氏が継承しているので、今後、A氏とします)
対する支払いを留保して、ちょっと考えてみました。

「こんなに支払う必要があるのかな?」と。

しかし、請求を受けた平成14年5月31日時点において、この計算方法を不当とする明確な根拠を得ることが出来ず、また、仲介人を通し、A氏側より退去時精算金の督促を受けたため、不本意ながら請求どおり支払うことにして、直接持っていきましょうか、と電話しました。
すると、A氏側は「振込みで」との意向でしたので、 平成14年7月1日に指定する口座宛て送金しました。

でも、この支払いは前述の通り請求金額及び精算方法に納得した上で積極的に支払ったものではありません。
支払いたくないけど、A氏から「あなたが支払う必要があります」、と言われたから、仕方なく支払ったのです。
これがポイントになります。

私は、一旦はA氏の請求通りに退去時精算金等を支払いましたが、請求金額及び精算方法の有効性について不審な点があると考え、民法、および本件と類似する過去の判例、事例等、また、国土交通省住宅局が示した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を独自に調査しました。


ここでは、Webが大変役立ちました。
同様な事例が出てくること、出てくること。
諸先輩方(?)の体験談、または、裁判での判例などなど、調べれば調べるほど、私が支払ったお金は、本来支払わなくても良かったんだ、と思い知らされました。
うーん、悔しい!

で、その結果、A氏が私に対して行った請求及び精算方法は、不当に過大なものであったと認識するに至り、A氏に支払った退去時精算金等のうち、本来、入居者である私の責により支払うべき金額を差し引いた残額の返還を請求することにしました。



※この記事は、2003年7月にまとめたものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


払わなくていいものは返してもらいましょう。


世の中に、アパート暮らしの人は大勢います。
そのすべての人が、入居時に敷金、礼金などを支払い、また、毎月家賃を納めて住んでいる訳です。

そして、何らかの理由により、アパートを出るときがやってきます。

そのときに問題となるのが、いわゆる「敷金返還」についてです。
ここ数年は、マスコミ等で取り上げられる機会も多くなり、社会問題化しつつあるようです。

Webにおいても、敷金返還に至るまでを詳細に公開してくれているところも多数あります。
ですが、そのほとんどは、大家に支払う前に調停なり、裁判なりで、「支払わなくてもよい」(つまり、大家に預けてある敷金を返してもらえる)という判決を貰う、といったものでして、敷金のほかに、修繕費用の不足分を請求されて、請求通りに一旦払ってしまった後で、「しまった!」と思い、本来は払わなくてもよかった分を返してくださいよ、と返還請求をした事例の報告は、ほとんどありません。

そこで、不肖、私が、一旦払ってしまった精算金を、たいした証拠もないという不利な状況から調停申立てを経て、請求額の約6割強取り返した記録と記憶を公開いたします。

(具体的には、支払総額 183.750円、返還請求金額 142.530円、調停成立による返還確定額 90.000円) 


一旦支払いを済ませた後、「あれ?」と感じているあなた、既に支払を済ませてしまったからといって諦めていませんか?
支払ってしまった後でも問題ありません。諦めないで頑張りましょう 。
必ず取り返せます。

払わなくていい物は、返してもらいましょう。


※この記事は、2003年7月にまとめたものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。

退去時精算金返還調停

もうずいぶん時が流れてしまいました。

以前、10年ほどアパート暮らしをしておりました。
その後、そのアパートから退去して、現在の住まいに移ってきたわけなのですが、
その際に、いわゆる「敷金トラブル」を経験しました。

その体験をドキュメント形式で文章に起こしたものをWebで公開しておりました。

当時はまだ、敷金を含む『退去時精算金』や、借りていた物件の『原状回復』などに関する情報も、事例も少なく、同じトラブルに巻き込まれてしまった人のために、という観点と、自分自身の闘いの記録として、記憶が鮮明なうちに書き留めておきたかったのと。
まあ、そんな理由からまとめたものです。

同じ状況になってしまった方から問い合わせを受けたり、アドバイスしたりで、それなりにお役に立った感はありました。

今となっては、すでに過去のものとなってしまっていますので、現在の判例はどういう流れになっているのか、また、実際の調停の流れが当時と同じなのか、変わってしまったのか、私には知る由もありません。
自分の調停終了後も引き続きほかの事例をウォッチしていたわけでもありませんし、あんな嫌な思いは一生のうち一回で充分ですし。
つまり、現在でも通じる内容なのかどうかは、一切責任が持てない文章なわけです。

ですが、それほど遠くない過去の、ノンフィクション歴史小説だと割り切れば、そこそこ大作です。駄文ではありますけど。

ということで、あくまで『過去の文章』であるという前置き付きで、良かったらご覧ください。