2010年7月3日土曜日

ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第7章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第7章
調停 (結審編)



94,000円。この金額は、正直、予想していませんでした。
当初の譲歩ラインは、ぎりぎり100,000円くらいだと思っていましたから、既に下回ってしまいました。
これ以上は何があっても譲れません。

でも、まさか、畳の交換代金が全額こちらの負担という判断になるとはねぇ。
青天の霹靂って、こういう時にぴったりの言葉です。やれやれです。

控室で待つことしばし、調停委員2が私を呼びに来ました。
三度、調停室へと入ります。

調停委員1
「はいどうも。でね、さっきの金額を向こうに伝えたんだけど、ハウスクリーニングのことなんだけどね。」

なにぃ?これ以上、私に譲歩しろと?

調停委員1
「きれいに使っていた人と、そうではない人とで、クリーニング代にどれくらい差があるのか、って聞いたんだよ、そうしたらね、綺麗に使っていた人だと、大体15,000円くらいですむっていう話なんだよ。
それで、今回は、請求金額が25,000円だよね、この差額をあなたが負担する、っていうことでどうかな。
金額にすると、向こうとしては、70,000円くらいを返してもいいって事なんだけど。」

もう、私としては、最終ラインを割っちゃってる訳ですから、これ以上譲歩するつもりはさらさらありません。
大体、70,000円では、この前仲介人の事務所で協議したときに向こうが提示してきた金額です。
全然譲歩してないのと一緒ではないですか。
こっちはこんなに譲っているというのに。


「こちらとしては、もうこれ以上は譲歩できませんよ、現状でもかなり減額している訳ですから。
それに、この金額では、向こうは全然譲歩していないことになりますよ。
前回、協議をした時には、こちら側が115,750円、向こうが72,000円っていうことで、その差が埋まらずに
今回のこの調停という事になった訳ですから。
私のほうは、さらに減額して譲歩しているじゃないですか、これ以上はちょっと無理ですよ。」

調停委員1
「え?そうなの、そういう話が出たのね、一回。」


「はい、そうです。」

調停委員1
(やれやれ、って感じの表情で)「向こうはそんな事言ってなかったなぁ、じゃ、相手方にも入室してもらって。」

調停委員2が、A氏とB氏を呼んできました。

調停委員1
「あなた、72,000円出してもいいって、一度言ってるの?それじゃ、この金額じゃ、譲歩してないよね、全然。」

B氏
「それはですね、話し合いの中で、私から、それくらいでどうか、っていう話をしましたけど、Aさんから出た金額ではなくてですね・・・」


「まあ、言った、言わなかったの話しになってしまえば、証拠はありませんが、私は確かに、Aさんの口から、72,000円くらいで、という話を聞きました。」

調停委員1
「Aさん、どうなの?」

A氏
「・・・えー、まあ、その、最初敷金分くらいは返してもいいという話をした後で、115,750円という話が出たので、それならあと20,000円くらいは出してもいいかなっていう話をしただけで・・・
あくまで、115,750円という金額に対しての話ですから・・・」

調停委員1
「でも、あなたは72,000円という金額は提示した訳ね?」

A氏
「・・・・・まあ、そういうことです。」

調停委員1
「なんだ、言ってる訳ね、じゃあ、全然譲歩してないじゃない?
それなら、桃さんが提示した金額ではどうなの?無理なの?」

B氏
「でも、こういう場に来た以上、話し合いは白紙からということになりますよね?」

まったく、余計なことを言いますね、こいつも。


「こちらも、140,000円から94,000円にまで下げているんですよ、この辺で考えてもらえないですかね?」

A氏
「・・・・・」

話が進まなくなってしまいました。
向こうとしても、70,000円では譲歩しているという根拠がなくなってしまいましたし、私も、これ以上下げる気はありませんから。
困ったのは、おそらく調停委員でしょう。お昼も近くなってきたし。
これまでの流れで、こういう時には、私に振って来る事になっています。

調停委員1
「本当はさ、調停委員がこんなこと言っちゃいけないんだけど、間を取って80,000円くらいの金額では、桃さん、どうだろうか?」


「こちらとしては、かなり譲歩しているのですから、先ほどの金額でお願いしたいです。」

調停委員1
「Aさんはどう?」

A氏
「・・・いや・・・・・」

煮え切らない野郎です。

調停委員2
「この辺りで決めないと、調停不調ということで、終了になりますが。」

やっぱり、お昼までに決めたいわけね。お役所ですから。

ここで、私に残された選択肢は

 1.あくまで94,000円以下は無理だ、という主張を通して、調停不調で、今後本裁判で争う。
 2.調停委員が提示した、80,000円台の金額で折れる。
 3.94,000円よりさらに譲歩して、少しでもこちらに返還される金額を多く確保した上で、合意に持ち込む。
の3つです。

1では、費用対効果の面でも、手間ひまが掛かるという面でも、得策ではないことは充分判っています。
と、すれば、残りは二つ。

2か3か、ということになれば、必然的に、3以外の選択肢はなくなります。
不本意ではありますが、それが、最良の答えということになります。


「わかりました、それでは、端数を切って、90.000円ちょうど、これでどうですか?
これだけ譲ったのですから、この辺で決めていただきたいと思います。」

調停委員1
「Aさん、どうかな?」

A氏
「・・・消費税とかなしで、90,000円ちょうどって事ですね?」

この期に及んで消費税の心配です。もうそんな事どうでも良くなってきましたよ、あたしゃ。

調停委員1
「(私に目配せしたあとで)そういうことだね、それを桃さんに解決金として支払うということで合意、ということにしてくれないかな?」

A氏、しばらく考えたあと、

A氏
「では、それでいいです。」

調停委員1
「じゃあ、その金額を、そうだな、今月中に・・・、桃さん、銀行口座へ振込みでいいんでしょ?」


「そうしてください。」

調停委員1
「じゃあ、今月末までに、桃さんの口座宛て振り込むということで。いいね?」

A氏
「わかりました」

調停委員1
「よし、じゃあ、調書を作るので、最後に裁判官が入室して、読み上げますから、それで異論がなければ調停成立ですから。
一度成立すると、これは、裁判の判決と同じ効力がありますから。」

そのあと、調停委員2に、私の口座番号を聞かれまして、それをA氏に教えています。

調停委員2
「送金手数料は、Aさん、負担してね。」

A氏
「はい。」

当たり前だよ、こんなに安くなっちゃったんだから、とは思っても、顔にも口にも出しませんが。

調停委員2
「では、調書が出来るまで、休憩しましょう、この部屋も暑いからね。お疲れ様でした。」

お世話様でした、という軽い挨拶をして、またまた控室へと戻ります。




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


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