2010年7月3日土曜日

ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第5章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第5章
調停 (開始編)



さて、いよいよ調停当日となりました。

10:00の呼び出しですので、多少早めに出掛けることにしました。
こちらから申し立てをしたのですから、常識的にも遅れる訳には行きませんし、待合室で、想定問答にもう一度目を通してもいいかな、とも思いましたし。

自宅から裁判所までは歩いても10分掛からない距離。
でも、今回は、手持ちの書類なんかもあるし、車で行くことにしました。

案の定、早く着きました。約25分前。

で、裁判所の駐車場に車を停めようと、バックして枠に収めていたとき、ややや、見覚えのある風体の中年男性を助手席に乗せた車が目の前に。
運転手の中年女性も、これまた見覚えのあるお姿。

A氏と、C子氏のご登場です。

時間より、だいぶ早めに来たようですね、向こうもやる気まんまんと言ったところでしょうか。
A氏を降ろして、C子氏運転の車は帰っていきました。
これから調停を行う相手に、まさか裁判所の玄関前で会うとはねぇ・・・
なんて素敵なタイミングなんでしょ。
しかし、ここはクールに、軽く会釈だけして、裁判所の中に入りました。

受付に挨拶して、2階にある申立人控室へと入りました。

カラオケ屋の一部屋くらいの広さです。喫煙室が併設されています。
喫煙者の私としては、 いまどき、ありがたいご配慮。
当然、まっすぐ喫煙室へ入り、まず(-。-)y-゚゚゚です。

予定通り、想定問答や、申立書なんかにもう一度目を通しながら、調停開始の呼び出しを待ちました。

10:00ちょっと前でしょうか、予想外の人物が私を訪問します。
仲介人の担当者、B氏です。A氏め、呼んだな。

B氏いわく、
「仲介人として、また、宅建業者として、意見を求められる場合があると思いまして、出来れば同席させて頂こうと思ってます。」
言い訳としては、まあまあですね。
これは間違いなく、A氏に頼まれてますね。呼び出し期日も知ってるわけですし。


B氏と2,3会話を交わしているうちに、調停委員から、開始するので調停室に入るように呼び出されました。

調停室に入ると、既にA氏が中にいました。他に調停委員が2名。
おかげさまで、相手の味方と同時に部屋に入るという、なんとも間抜けな展開になってしまいました。

一通りの挨拶を済ませて、調停委員1が申立書に目を通します。

調停委員1
「・・・えー、要するに、払い過ぎたと思われる退去精算金を返還して欲しいと、こういう事実関係でよろしいですね。」


「 はい、そういうことです。」

A氏
「ちょっと待ってください、私としましてはですね、一度納得して支払ってもらったという事で、既に契約は終了していると思っている訳ですよ、それを半年以上過ぎてですね、返してくれと言われましてもね、これは無効ではないのかと思いますが・・・」

やっぱりそう来ましたか、想定どおりの展開です。この展開に対応する用意は万全です。ところが・・・

調停委員1
「あのね、民法の解釈からしても、まだ時効って事はないですよ。
余計な支払いをしてしまったな、と気が付いて、そのあといろいろ調べて、そうしたら、人間の知恵が回るのには半年くらいは掛かっても、これは長すぎるとは私は思わないけどねぇ。」

A氏
「・・・・・」

調停委員1
「この件について、桃さん、どうですか?」

おっと、予想だにしなかった展開。
こっちが言いたい事を言ってくれた感じです。好感触>^_^<


「はい、私の考えとしましては、これは、錯誤により支払ったもので、消費者契約法第4条1項1号により、返還を求めることが出来ると考えています。
また、 同7条により、時効前に返還交渉を開始していますので、何ら問題はないと考えています。」

この間に、調停委員1に電話が入ってしまい、話は調停委員2が聞くということに。

調停委員2
「分かりました、エーとですね、消費者保護法の、何条でしたっけ?」


「(おいおい、ちゃんと聞いてろよ)第4条の1項1号です。」

調停委員2
「それにより、返還を求められる、と。」


「そうです。」

私からの話を聞き終わったところで、調停委員1の電話が終わり、調停委員2がいきさつを申し送っています。
どうやら、調停委員1のほうが、上司というか、メインな存在で、調停委員2はサポート的存在のようです。

調停委員1
「通常の考え方ですとね、桃さんは10年住んでいた訳でしょう、そうすると、壁紙の交換なんかは貸し主負担で修繕する、というのが一般的ですけどね。それと、ハウスクリーニング、これも、ガイドラインでは貸し主負担だよね、その辺は仲介人、承知している訳でしょう?」

B氏
「もちろん承知しています。しかしですね、顧問弁護士に相談したところ・・・」

ん?顧問弁護士なんていたの?

B氏
「ガイドラインというのは、悪質な大家に対して作成されたもので、法的な拘束力は・・・」

やはり、そう来ましたね。こちらも予想通りの模範解答というか。
まあ、前々から、そんな事言ってましたからね。

調停委員1
「でも、知っていた訳でしょう、ガイドラインによる計算方法は。」

B氏
「・・・・はい。」

調停委員1
「知っていたのに、こういう請求を出した訳ね?」

なんか、非常に好感触になって来ました。
私が発言する間もなく、彼が言いたいことを言ってくれちゃってます。
心の中でガッツポーズ、しかし、表情はあくまでクールに。

そのあとで、A氏とB氏、とんでもない発言を始めます。

A氏
「しかしですね、桃さんの場合は、通常の使い方では考えられないほど汚されてまして・・・」

なんだと!言ってくれるね。今まではそんな事、一度も言わなかったくせに。

B氏
「そのままでは、明らかに、次の借り手がつかない事は明らかでして・・・」

調停委員2
「でもね、これ(壁を指差して)なんてね、(償却期間は)5年だよ、普通。」

調停委員1
「まして、10年の入居でしょう、これを入居者の負担とするのは、どうかと思いますよ。」

B氏
「それで折半ということにしているんですが・・・貸し主は、30万円以上出してますし。」

と、明細を出してきました。

調停委員1
「どれどれ、これね。」

目を通しています。

A氏
「私もですね、好きで賃貸住宅を経営している訳ではなくて、親も高齢になってきて動けなくなりますし、
畑を遊ばせておくのももったいないので、こうしてやっている訳で、納税も高額なものになりますし、
決して儲かっている訳では・・・」

調停委員1
「それは、あなたの都合でしょう。
だからといって、入居者には関係ないでしょう、そういう事は。」

相手側が言い訳をして、それを調停委員に諭される展開が続いてきました。
調停委員1も、なんとなくイライラしてきた感じです。

調停委員1
「よし、それじゃあねぇ、桃さん、あなたの言い分は大体わかったから、 一度席を外してくれないかな?
こちら(A氏とB氏)の言い分を先に聞いちゃうから。」

調停委員2
「呼びに行くまで、控室で待っていてください。」


「分かりました。」

やれやれって感じです。
ここで、一旦退席して、控室へと戻りました。

これまでの感触としては、なかなか良かったので、もしかすると、結構な金額を取り返せるかなぁ、と思っていたのですが、やっぱり、調停っていうものは、お互いの言い分をよく聞いた上で進みますので、そう甘いもんじゃありません。

わたしも、それを思い知らされることになります。





※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


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