2010年7月3日土曜日

ドキュメント・退去精算金返還一年紛争 第8章


※内容的には2003年当時のままです。現在と異なる状況も考えられます。参考程度にどうぞ。

第8章
調停 (裁判官編)


 
調停というのは、2人の調停委員が話をまとめると、その合意内容についての文章を考えます。
そして、その文章を、裁判官が承認する、といった感じで読み上げまして、異論がなければ、ここで、本裁判の判決と同等の効力が発生する訳です。

通常の、金銭の貸し借りトラブル、交通事故トラブルなんかですと、事例別に、例文集がありまして、調停委員はこれを写せば言い訳なんですが、今回の私の、いわゆる「敷金トラブル」については、調停で解決した例がまだ少ないのか、 例文が載っていません。
で、調停委員は、一から文章を考えなければならず、ここで結構時間が掛かってしまいました。
この地域でも、今までこういった訴えはなかったらしく、裁判所にも例文がないみたいでした。


どうやら、この種のトラブルの第一人者になったようです。
他の店子さんたちは、みんな、泣き寝入りか、納得して支払ってるのか、それとも、私のように「錯誤」して、支払ってしまったのか。
おそらく、この地域でも、今後、この手の訴えは増えていくんでしょう。気になるところです。

 

さて、しばらくして、やっと文面がまとまったようで、関係者全員が調停室に呼び出されました。

調停委員1
「お待たせしました、文例にもなかったので、作成に手間取りまして、申し訳ないです。
それでは、今から読み上げますので、これで異論がなければ、裁判官に同席してもらって、あ、まれに、裁判官の判断によって、私が読んだ文章と異なることもあります。
裁判官が読み上げる文章が、いわゆる「判決」と同じですから、その上で同意するかどうか、確認されますので。」

いよいよ、この1年の集大成とも言える瞬間が近づいてきたようです。
調停委員1が、合意内容を読み上げていきます。
この合意内容については、裁判官が読み上げたものと、まったく同じでした。
機会があれば、あとで資料室に追加したいと思います。

内容は、裁判官が読み上げる場面で書いてますので、ここでは割愛させて頂きます。

さて、読み上げたあと、合意しますか、という質問になりまして、ここは、両者ともすんなり、それでいいです、っていう事になりました。
その後、裁判官を待つ訳ですが、他の調停室でも合意に至ったらしく、そちらへ先に行ってしまったようで、また待つことになりました。
調停委員2は、なにやら、手続き関係で、あちこち動いているらしく、退室しています。

今日は、待ってる時間のほうが長いくらいです。

ここで、暇つぶし?に、調停委員1に、先ほどから疑問に感じていたことを聞いてみることにしました。


「あの、今、合意に至りましたので、あくまで、参考というか、後学のためにお伺いしたいのですが?」

調停委員1
「はい、なんでしょう?」


「最初に、仲介人が同席したい、と言ったときに、もし、私が、同席を拒んでいれば、それは認められたのですか?
特に、私に聞かずに、調停委員さんの一存で、同席を認めてしまいましたが。」

調停委員1
「確かにね、一方が拒めば、無理に同席されろ、って事は無理でしょうね。
ただ、私たちも、宅建業界のことについては、詳しい事情までは知りませんから、業界の事情を聞くのに同席してもらう、っていう可能性はあるよね。」


「わかりました。私はいつも一人でこうやって話し合いをしているのですが、どうも、相手は複数人で出席なさるので、何かと、言いたい事も言えず、不利な立場でいると思ったものですから。
もちろん、調停が合意に至ったので、こうやって、お話している訳ですが。」


A氏 B氏
「・・・・・」

私が、最初に、同席を認めたくない、っていう話をしなかったのは、調停室への入室は拒めても、裁判所の敷地から出て行け、とまでは言えないだろうな、って思ったからです。
実際、そうでしょうけど。

ならば、退室した時にいくらでも、ネタあわせ、入れ知恵なんかが出来ちゃう訳ですし、同席するのと一緒だな、と。
裁判所に来ちゃった段階で、どうにでもなる訳ですからね。
これを拒むことも出来ないし。
交通事故なんかだと、保険会社の人が同席するケースが多いらしいです。

まあ、これも戦術のうち、と言ってしまえばそれまで。卑怯な手段と言ってしまえばそれまで。
いずれにしても、既に終わってしまった調停ですから。

次にやるときは参考にしようっと。(多分、次はないけど。)
こっちも味方を呼ぶとか、相手の味方の同席は徹底的に拒むとか。

でも、仲介人B氏の話によると、アパート経営者って、結構お年寄りが多いらしく、調停の仕組みとか自体が分からないっていうか、かなり「口語体」な話しか出来ない人も多いので、代わりに話しに来るケースも結構あります、との事です。
そういうときは、拒めない可能性もありますね、調停委員の判断で。

そんな話をしていると、調停委員2が私にこんな事を・・・

調停委員2
「あなたは若い割には言うことも的を得ていて、分かりやすくてよかったですよ」


「そうですか、それはどうもありがとうございます・・・・・(ん?)」

調停申立書には年齢を書くところはありません。
裁判所で住民票でもとって調べているのなら別なんですが、おそらく、「若い」と見られたのは「金髪」のせいなんだろうな、とひとり納得。
金髪の割りにはまともな事を言ってるので、「ほう」と思ったようですね。
誉められたんだか、どうなんだかってところですけどね。

さらに、調停委員1からも

調停委員1
「この申立書もよく書けてるね、誰かに頼んだの?」


「いえ、自分で作りました」

調停委員
「ほう、そうなの、じゃあ、ずいぶん勉強したんでしょう?」

良くぞ聞いてくれました、って感じです。
本当に、ずいぶん勉強しましたから。


「はい、かなり勉強しました」

認めてもらえたようで、なんだかいい気分です。
でも、金額はすでに決まっちゃいましたし、あくまで、事後の雑談なんですけどね。

 

さて、いよいよ、裁判官の登場です。

今まで本物の裁判官を見たことがない私は、裁判官の制服って、マントみたいな服なんだとばっかり思ってました。
普通のスーツなんですね、ビックリしました。
これじゃ、職員なんだか、裁判官なんだか、わからないですよ。
でも、気取った感じもなく、印象的には悪くないです。

席に着くなり、いきなり読み出しました。かなり急いでます。
もう、お昼をちょっと過ぎてます。 公務員なのに(^_^;)、ご苦労様なことです。

合意した内容は、大体こんな感じです。

相手方は、申立人に、解決金として、金90,000円なりを支払う義務がある。
支払い期限は、平成15年6月末日限りとする。
その他の債務、争いは一切ないものとする。


3.については、後で、「しまった」と思いました。そのときは気づきませんでしたけど。
その辺は、この後の反省編にて詳細を。

合意内容について書かれた書類は、基本的に発行されません。
必要な場合は、別途申請する事になります。
その場合は、書類の枚数により、1枚当たり150円分の印紙が必要になります。
期限までに支払いがなかった、という場合を除き、特に必要はありませんが、
「戦いの記録」として欲しい場合には、約1週間後に裁判所に電話して、問い合わせてみてください。

私も、合意文書にはんこを押したりするのかな、なんて思ってましたが、そういうことも一切ありませんでした。
ただ、裁判官が読み上げただけ、というのが正直な印象でした。



かくして、1年にわたった退去精算金の返還紛争は、調停での和解という事で決着しました。
申立人である私は、申立て時に収めた切手の余りがありますから、ということで、事務室に立ち寄り、その切手を受け取って、裁判所を後にしました。




※この記事は、2003年7月にまとめたものを一部改稿したものです。あくまで当時の記録としてご覧ください。


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